No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
Cross Talk

テクノロジーが人の美意識を更新してきた

畠中 ── AIが作った映像作品に、Googleの「ディープドリーム」がありましたよね。ある意味で新鮮だったと思うのですが、まるで悪夢みたいな映像なので(笑)、それを観た多くの人のAIというものに対するイメージを随分決定してしまったという気もしています。それこそシンギュラリティ、ディストピア的なAI感を助長したのではないでしょうか。

ディープドリーム
ディープドリーム
グーグル社が発表した人工ニューラルネットワーク。心の内側で起きている事象を視覚化するシステムである

徳井 ── ディープドリームは、何かの絵を見た時にニューラルネットワークの中のニューロンが一番発火した部分を見つけ、より発火するように、絵のもともとの特徴を強調していった結果生まれた画像です。つまりAIが喜ぶように、あるいはAIにとって知的な刺激となるように絵をどんどん変えていったらああなった、ということですから「AIのためのアート」だと言えるかもしれないですね。

畠中 ── 人間は関係ないとも言えるわけですね。「バベルの図書館」のような小説の生成でも、人間を対象にしていない。そういうものを見た時、全く理解はできない一方で、そこに美を感じてしまうこともあります。

テクノロジーが見せてくれる美というものは、フラクタル*5が生み出す造形などにしても、ずっとあったと思います。それ以前には、ああいう映像を僕らは見たことがなかった。それがコンピューターの演算によって可能になった時、「こんな綺麗なものは見たことがない」と思ったりする。

もちろん、フラクタルは自然の要素をシミュレーションした結果、ああいう形に辿り着いたわけですが、それによって見られるイメージは自然には見られないものでした。それは、僕らの美意識がテクノロジーによって更新されたとも言えるわけです。

徳井 ── まさにそう思います。

畠中 ── コンピューターがつくり出したものによって、僕らの美意識が変わったという瞬間がたくさんありました。AIにしても、僕らが知り得ないもの、人間の考えではなかなか到達できない考えをもたらしてくれる。そういう部分に可能性があるのかなという気はします。

だからディープドリームのようなテクノロジーを突き詰めていくと、実は面白いのではないか。人間はこんなものは絶対につくらないというものが出てきますから。それを人間の側がどう判断するかということになるのでしょうね。

【後編のあらすじ】

後編では、徳井さんはAIの研究を志すきっかけとなったメディアアート作品を、畠中さんはICCの開館前から携わってきたメディアアートの源流について語ります。一方、徳井さんのもう1つの顔であるDJとしての活動はAIやアートの未来とも密接な関連がありました。対談の結びには、これからのメディアアートについて畠中さんに展望していただきます。

真鍋大度氏には、Telescope Magazine第2号「ヒューマンインタフェース」のクロストークにもご登場いただいています:http://www.tel.co.jp/museum/magazine/human/crosstalk/

[ 脚注 ]

*5
フラクタル: フランスの数学者ブノワ・マンデルブロ(1924-2010)が導入した幾何学の概念。図形の部分と全体が自己相似になっている様などをいう。マンデルブロ集合やジュリア集合、野菜(ブロッコリー、ロマネスコ)や貝殻の形状など、自然界で多く見られるのが特徴。

Profile

畠中 実(はたなか みのる)

1968年生まれ。NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] 主任学芸員。

多摩美術大学美術学部芸術学科卒業。1996年の開館準備よりICCに携わり、2000年「サウンド・アート」展、2007年「サイレント・ダイアローグ」展、2012年「[インターネット アート これから]——ポスト・インターネットのリアリティ」展など、多数の企画展を担当。

このほか、ダムタイプ、明和電機、ローリー・アンダーソン、八谷和彦、ライゾマティクス、磯崎 新、大友良英、ジョン・ウッド&ポール・ハリソンといった作家の個展を行なう。

http://www.ntticc.or.jp/

徳井直生(とくい なお)

1976年石川県生まれ。Qosmo 代表取締役、メディアアーティスト、DJ。

東京大学 工学系研究科 電子工学専攻 博士課程修了。工学博士。在学中からプログラミングを駆使した音楽・インスタレーション作品を発表するなど、活動は多岐にわたる。

ソニーコンピュータサイエンス研究所パリ客員研究員を経て、2009年にQosmoを設立。AIと人の共生による創造性の拡張の可能性を模索している。近作にAIを用いたブライアン・イーノのミュージックビデオの制作などがある。また、AI DJプロジェクトと題し、AIのDJと一曲ずつかけあうスタイルでのDJパフォーマンスを行う活動を続けている。

主な展示に、2011年「N Building」(「Talk to Me」展/ニューヨーク現代美術館)におけるコンセプト/プログラミング。2015年「Ghost in the Cell 細胞の中の幽霊」(金沢21世紀美術館)におけるサウンドデザインなど。

http://qosmo.jp/

Writer

神吉 弘邦(かんき ひろくに)

1974年生まれ。ライター/エディター。
日経BP社『日経パソコン』『日経ベストPC』編集部の後、同社のカルチャー誌『soltero』とメタローグ社の書評誌『recoreco』の創刊編集を担当。デザイン誌『AXIS』編集部を経て2010年よりフリー。広義のデザインをキーワードに、カルチャー誌、建築誌などの媒体で編集・執筆活動を行う。Twitterアカウントは、@h_kanki

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