No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
Scientist Interview

── 日本にも事務所を設立されたそうですね。

モーメント・ファクトリーはすでにロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ロンドンにオフィスがあり、つい最近東京にも開所しました。東京事務所は、アジアで最初のオフィスになりますが、すでにパブリック・スペースや大規模インスタレーションなどのプロジェクトの打診が来ています。モントリオール事務所への日本からの訪問も多く、これからが楽しみです。

── インタラクティブなエンターテインメントの環境制作は、これから競争が激しくなる市場だと思いますが、新しいテクノロジーはどこから見つけ、新しいインスピレーションをどのように得るのでしょうか。

今、最も面白いことが起こっているのは、ビデオゲームの世界だと思います。けれどもそれだけでなく、いつもあらゆる場所に目を向けるようにしています。例えば、子供のおもちゃひとつとっても、この小さなスケールを拡大したらどうなるだろうといったアイデアが浮かんできます。また、ピクサーのような映画を観れば、アニメーションは重力などの物理法則に従う必要がないので、クリエイティビティが制限なく発揮されている。そうしたものを目にするのも刺激になります。また、科学分野の発展も興味深いものです。新しい科学的な発見があれば、どんなことでも、これはどう応用できるだろうと考えます。ですから、新しいテクノロジーやインスピレーションの核心は、あらゆるところにあるのです。

社内の壁に飾られた様々な作品やインスピレーションゴッホの筆使いを描き変えられインタラクション・アート
[図6] 社内のスタジオで。ゴッホの筆使いを描き変えられるインタラクション・アート(左)。社内の壁に飾られた様々な作品やインスピレーション(右)
CREDIT: Moment Factory

── 今後、テクノロジーはどのような方向へ発展していくと思いますか。

人間はこれからますます、バーチャル世界やバーチャル世界の中の存在と交わっていくでしょう。これがまさにテクノロジーで起こっている重大事だと言えます。ロボットの利用範囲も拡大していますし、ドローンなど電池で作動する自律航空機、自走車両なども、新たな潮流になっていて、われわれもテーマパークで利用しています。モーメント・ファクトリーは、こうした新しいテクノロジーを使って、人が心の底で求めている「人類のつながり」のために役立てたいと思います。

ドミニク・オーデット氏
 

Profile

ドミニク・オーデット(Dominic Audet)

モーメント・ファクトリーの共同創業者兼チーフ・イノベーション・オフィサー。
現在、同社のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを務めるサクチン・ベセットと共に、2001年にモーメント・ファクトリーを設立、ビジュアル・アートと物語を統合した体験型エンターテインメントの制作を手がける。それ以前は、モントリオールのサイエンス・センターでマルチメディア展示を担当し、プラネタリウム、バイオドーム、昆虫ドーム、植物園などの展示制作に携わった。元々は、企業イベントやパーティーなどでのビジュアル・ジョッキー(VJ )が出発点。べセット氏とはこの当時から協働してきた。

Writer

瀧口 範子(たきぐち のりこ)

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。
上智大学外国学部ドイツ語学科卒業。雑誌社で編集者を務めた後、フリーランスに。1996-98年にフルブライト奨学生として(ジャーナリスト・プログラム)、スタンフォード大学工学部コンピューター・サイエンス学科にて客員研究員。現在はシリコンバレーに在住し、テクノロジー、ビジネス、文化一般に関する記事を新聞や雑誌に幅広く寄稿する。著書に『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』(TOTO出版)『にほんの建築家:伊東豊雄観察記』(TOTO出版)、訳書に 『ソフトウェアの達人たち(Bringing Design to Software)』(アジソンウェスレイ・ジャパン刊)、『エンジニアの心象風景:ピーター・ライス自伝』(鹿島出版会 共訳)、『人工知能は敵か味方か』(日経BP社)などがある。

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