No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
連載01 コネクテッドカーが本格稼働
Series Report

ルネサスもコーダワイヤレスとコラボ

V2Xシステムを実際の通信に使う場合には、セキュリティを構築しておく必要がある。ドイツのインフィニオンテクノロジーズは、サイバー攻撃から身を守るための認証回路用プロセッサと、データに暗号をかけるプロセッサをすでに持っており(参考資料4)、コネクテッドカーにも使えることをアピールしている。

日本のルネサスエレクトロニクスでもセキュリティを強化しており、昨年10月にはコーダワイヤレスと組み、V2X用のシステム開発向けのツールを発表した。かれらは、ルネサスの無線通信用SoC「R-Car W2R」チップとV2X用ホストプロセッサ「R-Car W2H」を搭載した開発用のスターターキットと、コーダワイヤレスのV2Xリファレンスシステムおよびソフトウエアを実装したリファレンスシステム(図4)を構築している。コーダワイヤレスのソフトウエアを使えば、ブラインドカーブの先にいるクルマを可視化したり、縦列走行したりするための機能などを織り込むことができるという。

ルネサスとコーダワイヤレスのV2Xリファレンスシステム
[図4] ルネサスとコーダワイヤレスのV2Xリファレンスシステム
出典:ルネサスエレクトロニクス

ルネサスのホストプロセッサ「R-Car W2H」には、通信やメッセージを暗号化してサイバー攻撃から守るハードウェアセキュリティモジュール(HSM)を搭載している。すなわち、V2Xの実現には、クルマと信号機やクルマとの通信規約だけではなく、ハッカーから身を守るための安全な認証回路や、重要なデータを暗号化する仕組みが必要なのだ。今回のルネサスとの協業により、セキュリティも含む完成度の高いシステムを構築できるようになるという。

携帯電話のネットワークも候補に

クルマ同士の会話で、802.11pなどのDSRCはかなりの実績を積んでいる。米国運輸省(DoT)でも、DSRCを使ったV2VやV2Xの実験を10年近く行ってきている。DoTはクルマの事故を減らすため、2019年末までに販売される新車にV2VおよびV2X通信機器の搭載を義務付けるとみられている。

しかしDSRC、特にV2Xでは道路側の装置に強く依存するのだが、これはまだ実証実験がなされていない。またDSRCよりも、従来のM2Mのようなセルラーネットワークの方が通信は安定している。このため、LTE(Long Term Evolution: 当初NTTドコモは3.9Gと呼んでいたが、ベースバンドの変調方式が3Gとは全く違うため、海外では4Gと呼んでいる)を利用するセルラーネットワークをV2VやV2Xの通信に用いようという考えが出てきた。こちらの方式は、クアルコムやエリクソンなどのセルラーネットワークで使う、モデムチップや無線通信機器を作っている企業たちが進めている。

LTEや5Gなどのセルラーネットワークを使えば、通信距離は2km以上に伸ばすことができる上、移動中でも基地局の切り替えが可能になる。クルマ同士あるいはクルマと道路との通信距離が伸びれば、早めに事故や道路状態、渋滞状況を知ることができるようになる。しかもほぼリアルタイムで交通情報を知ることができるため、混雑の解消に役立つ。また、これまでの渋滞情報などは交通管理センターや自動車メーカーが提供していたが、リアルタイムの情報ではなかった。しかし、セルラーネットワークを使ったコネクテッドカーであればオープンシステムなので、携帯通信業者をはじめとするさまざまなサービス業者が参入でき、リアルタイムの情報をやり取りできる。参加できるプレイヤーが増えることで、欲しいサービスを実現しやすくなるのだ。

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