No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
連載01 コネクテッドカーが本格稼働
Series Report

サービス提供業者も出現

さらに、コネクテッドカーに向けた新しいサービスを検討するチームが現れた。企業ERPソフトウエア大手のSAPが運営する「ビークルズネットワーク」に、モジオが加わることが2月に発表されたのだ(参考資料5)。モジオは2012年創立のベンチャー企業。ドイツとアメリカでコネクテッドカー向けのオープンプラットフォームを構築しており、アプリを通して駐車場とガソリンスタンドの情報を提供している。ビークルズネットワークはSAPのクラウド基盤上に作られており、モジオのような参加ネットワーク企業は、クラウドを利用してドライバーにサービス ── 駐車場の探索や予約、支払いなど ── を提供できるようになる(図5)。

SAPのビークルズネットワーク
[図3] SAPのビークルズネットワークというクラウドを利用してモジオのアプリから駐車場の場所の探索や予約、支払いなどをワンストップで済ませることができるようになる。
出典:Mojio

またSAPは、コネクテッドレンタカーをより便利にするため、傘下のSaaSベンダーであるコンカーテクノロジーズとレンタカー大手のハーツ、通信機器大手のノキアと提携した。このサービスを利用すると、例えば出張先でレンタカーを借りた場合や駐車場、ガソリンスタンドへの支払いなど、出張中の全ての支払いがコンカーテクノロジーズのソリューションを使って自動的にリアルタイムでレポートされるようになるという。

また、モジオのSAP「ビークルズネットワーク」への参入により、ドライバーはスケジュールアプリに従って駐車場の予約を行い、クルマの位置情報に基づいてリアルタイムで駐車スポットを見つけて支払うことができるようになる。モジオのアプリにはプライベート用とビジネス用のタップがあり、それをビジネス用に切り替えることで出張精算をコンカーテクノロジーズのソリューションに送ることができる。

新サービスで経済を活性化

そのほかにも、シングロジックスのIoT向けアプリServiceMaxを利用した、コネクテッドカーの追跡(トラッキング)といった管理サービスも提案されている(参考資料6)。

このように、クルマがつながることで新しいサービスが生まれ、経済が活性化する。これまでの自動車産業は、自動車メーカー(OEM)を頂点として、サブシステムメーカーであるティア1サプライヤ、それに使われる部品メーカーのティア2サプライヤなどから成り立ってきた。しかし、新しいコネクテッドカーのコンセプトは、自動車産業の構造をガラリと変えてしまう可能性がある。連載第3回では、つながるクルマにおいて最も重要なセキュリティと、次世代の5Gセルラー通信によってコネクテッドカーはどう変わっていくかを解説する。

[ 参考資料 ]

1.
Daimler Connected Trucks
https://www.daimler.com/innovation/digitalization/connectivity/connected-trucks.html
2.
The IoT-Connected Car of Today - Case Studies
https://www.digitaldoughnut.com/articles/2017/march/the-iot-connected-car-of-today-cases/
3.
CES2013: Cisco, NXP Invest in Cohda Wireless to Enable the Connected Car
http://www.nxp.com/video/ces2013-cisco-nxp-invest-in-cohda-wireless-to-enable-the-connected-car:NXP-COHDA-WIRELESS
4.
Infineonのホームページから「V2X Automotive」
http://www.infineon.com/cms/en/product/promopages/m2m/#v2x_automotive
5.
SAP Showcases New Technology for Connected Vehicles with Concur, Hertz, Nokia and Mojio (2017/02/27)
https://www.moj.io/smart-parking-sap-vehicles-network-mojio-connected-car-platform/
6.
ThingLogix Connected Car Solution
http://3wuaw41ohoui11a4fd1mpkgq.wpengine.netdna-cdn.com/wp-content/uploads/2015/04/thinglogix_connected_car.pdf

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

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