No.010 特集:2020年の通信・インフラ
連載02 Security of Things(モノのセキュリティ)の時代へ
Series Report

第1回
あらゆるモノでセキュリティが必須になった

 

  • 2016.02.02
  • 文/伊藤 元昭

あらゆるモノがインターネットに接続されるIoT(Internet of Things)の時代が到来する。自動車や医療機器、電気・水道・ガスなどのライフラインといった生きるために欠かせない機器やシステムさえ、インターネット経由で管理・制御されるようになる。IoTが豊かな生活や社会を生み出す仕組みであることは確かだ。しかし、システムの破壊、不正操作、情報漏洩を目論む人物の眼にも便利で魅力的なものに映っているはずだ。本連載では、第1回でIoT時代に欠かせないセキュリティとは何か、第2回でIoT時代のセキュリティ強化策、第3回で将来のセキュリティ技術と新たに浮上した課題をそれぞれ紹介する。

パソコンを使っていて、OSやアプリケーションソフトの度重なるアップデートにイライラした経験はないだろうか。また、セキュリティ対策のためのソフトの値段を見て、使っている実感がないのにこのような金額を払う必要があるのかと躊躇したことはないだろうか。

これからは、パソコンやスマートフォンなどIT機器だけではなく、家電製品や自動車などでも似た経験をすることになるかもしれない。あらゆるモノがインターネットにつながることで、常にハッカーからの攻撃にさらされるようになるからだ。ただし、そのような状態は、ユーザーもメーカーも望んでいない。このため、さまざまな業界が一致協力して対策に乗り出している。

IoTがサイバー攻撃の標的になる条件はそろった

これまでインターネットに接続する身の回りの機器は、パソコンやスマートフォンといったIT機器が中心だった。これが今、テレビのようなAV機器はもとより、エアコンや冷蔵庫などの白物家電、自動車、工場で動く加工機や製造装置、医療機器、そして電気・水道・ガスといったライフライン、交通インフラなどなど、世の中のありとあらゆるモノがインターネットに接続され始めた。さまざまなモノがインターネットにつながることで、遠隔操作や遠隔地の監視、多くのモノの一括管理・制御などが可能になる。生活・ビジネス・社会活動に大いなる利便性をもたらすことは確実だ。IoT時代の本格的な到来は目の前に迫っている。近未来の産業界は、IoTを中心に発展していくといっても過言ではない。

しかし、見逃すことのできない不安要因も同時に抱えることになる。パソコンを対象にしてシステムを破壊、不正操作、情報漏洩をしていたハッカーにとって、絶好の攻撃対象になるからだ。IT技術を基にして国際競争力を高めることを目的に設立された独立行政法人 情報処理推進機構は、家電製品や自動車などに以下の3つの条件がそろったとき、ハッカーの攻撃に対するセキュリティ対策が必要になるとしている(図1)。「インターネットへの接続」「ハッカーの攻撃意欲が増すサービスの登場」「汎用性の高い技術を利用したシステム開発」である。現在開発が進められるIoTシステムは、この3条件を見事に満たしている。

機器やシステムで、ハッカーの攻撃に対するセキュリティ対策が必要になる3つの条件の図
[図1] 機器やシステムで、ハッカーの攻撃に対するセキュリティ対策が必要になる3つの条件

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