LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
Scientist Interview

例えば、トイレの電気がついてウォッシュレットが使われたから、今トイレに人がいると推定。それなら居間の照明はオフにして、人が戻ってきそうになったら何事もなかったかのように照明をつければいいでしょう。

1LDKのマンション内に設置されたスマートタップ
[図表2] 1LDKのマンション内に設置されたスマートタップからの情報を元に、利用者が現在どのような行動を取っているのか推定して、画面上に表示している(左)。実際の人の動き(右)とそれほどずれていないことがわかる。

──この黄色い点が人の位置を表しているのですね。たんに家電の運転状況を表示するだけでなく、その人がどこにいるかまで推定していると。どうしてこのようなことができるのでしょう?

僕の研究室では昔から画像認識技術を研究していました。画像認識ではカメラからの映像をパターン認識しますが、その代わりにスマートタップからのデータを使っています。基本的にはパターン認識技術の応用ですね。
現在は一人を対象に行動を推定していますが、複数人の存在も認識できます。

──テーブルタップに複数の家電を接続している場合でも大丈夫ですか?

一つのテーブルタップに四~五台程度の家電を接続し、それぞれを電流波形で区別する方法を現在開発しています。

──エネルギーマネジメントの効果が大きいのは、複数人のいる環境ではないでしょうか?

個人を特定するのは困難ですが、どこでアクティビティが行われているのかはすぐわかります。ちなみに、家庭内であれば、ウォッシュレットの使用状況によって、人の区別も可能です。

──複数人がいる場合、冷暖房を入れている部屋に皆が集まるなどすれば節電効果が高いと思いますが、このような指示も行うのでしょうか?

利用者に命令するのではなく、誘導する仕組みも将来的に入れる予定です。

──スマートグリッドで使われるスマートメーターと、スマートタップでは何が異なるのでしょうか?

スマートメーターで測るのは電力量で、測定する間隔もせいぜい10分おきです。我々のスマートタップでは電流・電圧波形をミリ秒単位で測定しますから、データを処理して実現できる機能がまったく違います。
また、データの所有権も重要なポイントです。スマートメーターは電力会社が設置して、電力消費をモニターします。IT関連企業などは、電力会社に対してこれらのデータを公開してさまざまなサービスを利用できるようにしてほしいと要求しています。しかし、各家庭がエネルギーをどのように使っているかというデータを電力会社に渡すのはプライバシーの問題があります。スマートメーターの経費を負担させられて、節電を迫られ、さらに生活パターンまで電力会社に知られてしまう。
これに対して、スマートタップのデータはそれを設置したユーザーのものです。外部のエネルギーマネジメントサービスを使いたいなら、ツイッターやFacebookを使うのと同じように、ユーザーがサービス事業者と契約をすればよいのです。

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