LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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国内事例

震災復興から立ち上がるスマートコミュニティ

地域で自律するエネルギーインフラや農業とITの融合の
取り組みから見えてきたコミュニティの再生モデル。

  • 2012.4.1
  • 文/林雅之

[図版]「陸前高田千年みらい創造会議」で描かれた陸前高田の未来ビジョン図

震災で大きな被害を被った被災地では、地域で自律できるエネルギーインフラの建設や農業とITの融合などの新しい取り組みが始まっている。その背後にあるのは、市民や組織、サービスなどの関係性をもう一度繋ぎ直し、新たなコミュニティを育てていこうという方向性だ。被災地から立ち上がるスマートコミュニティの現場をモデルとして、人口減少や高齢化で疲弊する全国の地方都市の社会インフラ再生のありかたを考える。

東北地域のエコタウン実現に向けた政府の取り組み

政府の国際戦略会議は2011年12月22日、中長期的な政策指針「日本再生の基本戦略」を決定(12月24日に閣議決定)した。東日本大震災からの復興に加え、社会の中心を占める中流階級である「分厚い中間層」が再び豊かになることを目指した施策などを盛り込んでいる。被災地で新成長戦略を先進的に取り組む施策例として、再生可能エネルギーの導入支援や、スマートコミュニティの構築、研究開発拠点の整備を通じ、産業の振興や雇用の創出を図るとしている。特にスマートコミュニティは震災復興のみならず、日本の成長を支える取り組みとして期待されている。

スマートコミュニティの構成に必要な6つの要素

スマートコミュニティを構成する「要素」は、主に以下の6つから成り立っている。

  • (1)エネルギー量の見える化を実現する「EMS(エネルギー・マネジメントシステム)」
  • (2)ビルのエネルギーの自動管理を行う「スマートビル」
  • (3)住宅のエネルギーの自動管理を行う「スマートハウス」
  • (4)電気自動車(EV)やITS(高度道路情報システム)*1などを含めた「次世代自動車インフラ」
  • (5)再生可能エネルギーと蓄電池との連携で電力安定供給を可能とする「分散電源システム
  • (6)スマートコミュニティを支える「クラウド基盤」*2

復興にあたってのスマートコミュニティを全体として上手く機能させるためには、エネルギー網のインフラを整備することが核となる。スマートコミュニティの頭脳として、それらを支えるシステムが、EMS(エネルギー・マネジメントシステム)である。再生可能エネルギーの変動にあわせて需給バランスを調整し、電力の供給量を最適化する役割を担う。地域内の電力を制御するシステムはCEMS(コミュニティ・エネルギー・マネジメントシステム)と呼ばれている。
今回の東北の被災地復興に向けては、太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーを活用しつつ、地域全体でのエネルギーマネジメントに取り組むCEMSが核となり、地域内での電力の「地産地消」を実現が期待されている。
CEMSは、地域全体のエネルギー需給を管理するコントロールセンターにより、産業エリアや商業エリア、そして住宅エリアをつなぎ、再生可能エネルギーやIT、蓄電池やコージェネレーションを活用し、地域内で電力の需給をバランスをとる。地域のビルや家庭の単位でも、再生可能エネルギーや蓄電池を活用することで、災害に強く系統からの自立性が高い地域エネルギー供給構造を整備し、地域内の自律分散型エネルギーシステムを実現できる。

地域全体のエネルギーをマネジメントするCEMS
[図表1] 地域全体のエネルギーをマネジメントするCEMS
(出所:「ITを活用した街づくりに関する経済産業省の取り組み」経済産業省商務情報政策局情報経済課説明資料 2012.2.9)

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