LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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標準化で読み解く日本型スマートグリッドの未来

市場と技術開発を方向づける標準化。
HEMSとスマートメーターの動向からスマートグリッドの方向を読み解く。

  • 2012.4.1
  • 文/今泉大輔

テクノロジーにおいて「標準化」とは、今後の市場と技術開発のあり方を方向づける大きな意味合いを持つ。スマートグリッドにおいても、3.11以降、経産省を中心に急展開で標準化が進めされており、家の中の家電製品を司るHEMS(Home Energy Management System)と、家と送電線の間に位置するスマートメーターの二領域において決定がなされた。海外の標準化動向も踏まえながら、日本のスマートグリッドはどこに向かうのかを考察する。

電力業界を丸ごとスマートグリッド対応にする標準化作業

スマートグリッドの実現には多数の企業や事業者が関係してくるため、利用される技術の「相互運用性」というものが必要になる。相互運用性とは、簡単に言えばA社製のハードウェアとB社製のハードウェアをつないで、電力会社C社あるいはD社いずれの環境で使っても、しっかりと動作することを指す。これは関係するすべての当事者が合意している「決まり」があることが前提になる。その「決まり」を定めることが、スマートグリッドにおける標準化作業だ。
スマートグリッド発祥の地とも言える米国ではNIST(アメリカ国立標準技術研究所)という、日本で言えばJIS(日本工業規格)を策定している日本工業標準調査会に近い政府系機関によって、2007年からスマートグリッドの標準化が進められている。米国には電力会社が小規模の公営を含めれば3,000社も存在している。従って、いざ相互運用性を確保しようとすれば何から何まで決める必要があり、「発電」「送電」「配電」「顧客」「電力市場」「運用」「サービス提供者」の七つの分野で標準化作業が行われている。言うなれば電力業界を丸ごとスマートグリッド対応にしようというアプローチだ。
対象となる標準化項目が無数にあるため、原則的にはいまある標準規格をできるだけ使うようにしている。NISTが認定したスマートグリッド標準は七分野で計三十五本、さらに今後調整が必要なものが六十二本ある(2011年10月のRelease 2.0)。2009年後半から始まった標準化作業は2011年いっぱいで完了する予定だったが、一部はまだ作業が続いている。
米国と比較すると、スマートグリッド関連で必要な標準化領域がごく少ないのが日本の特徴だ。日本では電力会社が十社に限られ、しかも各地域で独占的な営業が行われているため、相互運用性を確保しなければならない領域は米国のように多くはない。現在は家の中のHEMS(Home Energy Management System)、家と送電線の間に位置するスマートメーターの二領域で標準化が進められている。

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