No.002 人と技術はどうつながるのか?
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ヘッドマウントディスプレイの利点と欠点

このように、ヘッドマウントディスプレイは、比較的古くから発売されている製品なのだが、一部の業務用途以外では、普及しているとはいいがたい。特に、1990年代後半に登場したコンシューマー向け製品は、発売当初は話題になったものの、売れ行きが低迷し、2000年代に入って後継製品の投入をやめたメーカーもある。通常のディスプレイにはない利点があるが、逆に欠点もあるためだ。通常のディスプレイに比べたときの利点としては、

  • ・通常のディスプレイに比べて場所を取らない
  • ・通常のディスプレイに比べて省エネルギーである
  • ・両眼タイプなら右眼と左眼に別々の映像を映せるため、立体視にも有利

といったところであろう。逆に欠点としては、

  • ・一人でしか視聴できず、複数で見る場合には人数分機器を用意する必要がある
  • ・字幕入りの映画を見る場合など、眼球への負担が大きい
  • ・当初の製品は解像度が低く、画質があまり高くなかった

といったことが挙げられる。

新世代ヘッドマウントディスプレイの登場

こうした欠点があるため、社会への普及のハードルは高いと思われていたのだが、ヘッドマウントディスプレイ関連の技術は着実に進歩を続けており、最近発表された製品は、これまでの欠点を解消した新世代版として、再び注目が集まっている。

その代表ともいえる製品が、2011年11月にソニーから登場した「HMZ-T1」である。HMZ-T1は、1280×720ドット表示対応の有機ELパネルを2枚採用し、従来の不満点の一つであった画質の低さを解消していることが魅力だ。3D表示にも対応しており、価格もリーズナブルであったため、注文が殺到し、生産が追いつかず、メーカーからお詫びの文書が出るほどの人気を集めた。

また、2012年7月にオリンパスが発表した試作機「MEG4.0」(コードネーム)も、将来像を示している。MEG4.0は、同社がウェアラブルディスプレイと呼んでいる超小型ヘッドマウントディスプレイであり、同社がこれまでに培ってきた技術の集大成的なデバイスだ。これまでは、サイズが大きく、デザイン的にも特異な形状であったため、装着した姿に違和感を覚えることが多く、外界が見えるシースルータイプの製品でも、装着したまま日常生活を送るには適さなかった。MEG4.0は、日常生活での利用を考慮し、簡単に眼鏡に着脱できる機構と違和感のないデザインを実現しており、重量も30g以下(電池込み)と非常に軽いので、装着したまま日常生活を送ることが可能だ。

[写真] ソニーのヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」。有機ELパネルを採用し、高い解像度とコントラストを実現した
[写真] オリンパスが開発した超小型ヘッドマウントディスプレイの試作機「MEG4.0」。同社独自の瞳分割シースルー光学系の採用により、外界の視界を遮らず自然にディスプレイの表示を見ることができる
[写真] MEG4.0は、Bluetooth 2.1に対応しており、スマートフォンなどとのワイヤレス接続が可能

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