No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載02 デジタル化した触覚がUIとメディアを変える
Series Report

第2回
UIに新しい可能性をもたらす触覚フィードバック

 

  • 2017.4.10
  • 文/伊藤 元昭

電子機器の「操作感」を向上させるため、触覚を効果的に活用したユーザーインタフェース(UI)の開発とその実用化が活発になってきている。触覚を活用したUIでは、視覚効果を駆使したGUI(Graphical User Interface)や音声認識技術を使い、これまでのUIでは実現できない、機器とユーザーの「一体感」を生み出すことができる。これによって、ユーザーが機器を意識して操作するのではなく、自分の手足のように動かせるようになるのだ。既に、触覚を効果的に利用して、機器と人を隔てる壁を取り去った新しいUIが、様々な分野で使われるようになった。連載第2回の今回は、触覚を活用したUIのインパクトと技術開発の動き、そして新しいUIによって開く未来の可能性について解説する。

道具や機械を、上手に使いこなしている状態を指して、「手足のように操る」という表現をすることがある。また、クルマやバイクなど乗り物を乗りこなしている状態は、乗馬の名人を形容する言葉を借りて「人馬一体」と表現される。いずれも、道具や機械と、それを使う人が自然に一体化して、人間の感覚が操るモノの隅々まで行き渡っている状態を表現した言葉だ。

機器とユーザーの接点となるユーザーインタフェース(UI)は、機器とそれを使う人を、いかに一体化できるかがとても重要になる(図1)。そして、人は五感をフル活用して、周囲の状況や注意を向けた先にある物事の状態を認識している。このため、よりよいUIを生み出すためには、機器と人の間で交わす情報を、五感を効果的に刺激しながら伝える工夫が欠かせない。五感の中でも触覚は、機器と人が直接触れ合って生じる感覚であるため、一体感が得られるUIを作るうえで大切な役割を担う。

人と操る対象の一体化には触覚を通じたUIが重要
[図1] 人と操る対象の一体化には触覚を通じたUIが重要
触覚効果を駆使したGUIに触れる要素を加味したタッチインタフェース 出典:Apple社のホームページ

触覚の活用を放棄してUIは進化してきた

ところが実際には、こうしたあるべき姿とは逆の方向にUIは進化してきた。多少ざっくりとした表現で言えば、道具や機器、特に電子機器のUIは、触覚(圧力やモノの動きを感じる力覚を含む)を徐々に排除する方向で進化してきたといえる。

例えば、かつての家電機器には、ダイヤルやスイッチ、ボタンなど機械的なUIが当たり前のように使われていた。それらは、カチカチと回して使うテレビのチャンネルや、ヌルっと回すオーディオのボリュームダイヤルなどのように、操作する感触を手で感じられるものが多かった。多少古い世代の人間は、チューニングダイヤルの微妙な感触を頼りに遠方のラジオ放送を聞こうと、四苦八苦したものだ。

これが今や、パソコンの「Mac」や「Windows」に代表されるような視覚効果を駆使したGUIが隆盛を極めている。その進化の過程で、機械的なインタフェースはどんどん削られていった。そして現在、Apple社の音声アシスタント「Siri」やAmazon社の「Alexsa」のような音声を媒介したUIが台頭してきている。

こうした、視覚表現や音声を介したUIは、機器形状の自由度の高さやコンパクトさ、そして操作の容易さにおいて、機械的なインタフェースよりもはるかに優れている。ただし、この機器とユーザーが一体となることで得られる操作感に関しては、むしろ退化した。これらは、常に一定の距離を挟んで働く感覚である視覚と聴覚を研ぎ澄ませたUIであり、機器とユーザーの距離が縮まらないからだ。スマートフォンのタッチパネルのように、機器に触れることで操作感を高めたUIが広く受け入れられたのは、自然な成り行きである。

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