No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
Scientist Interview

MOONBlockによって
プログラミングのハードルを下げる

──清水さんが今までに影響を受けたものって何でしょうか?

HyperCard*2には影響を受けています。HTML以前のハイパーテキスト*3は、非常に興味があり、HyperCardの中で、エンドユーザーがプログラムを書くように設計されているところは参考にしました。特に、enchantMOONで意識したのはユーザーの学習曲線。通常のコンピューターのプログラミングは、ものすごくハードルが高いため、多くの人はメールやエクセルを使う程度でしか、コンピューターの力を活用できていない現状にあります。コンピューターが本来持っているプログラミングという強力な力を使わずに、その一生を終えるのはもったいないと考えました。また、enchantMOONのように手書きが可能な端末の場合は、書く線の色を変えたいとか、太さを変えたいとか、白地の背景にしたいとか、様々な要望が出てくると想定されます。それに対し、最初から線の色を変えるコマンドや太さを変えるコマンドを用意するのは簡単です。しかし、用意したコマンドを書いてもらうより、プログラムそのものを簡単に書けるようにするほうが、シンプルで使いやすいのではないかと考えました。だから、たかが書く線の太さを変えるのにも、ユーザー自身がプログラムをする設計になっています。

──なるほど、機能をわざと削っているわけですね。

もちろんそうです。ただ普通の紙にメモをするときに、線の太さや色にこだわる人は少ないでしょう。だから、そんなコマンドはなくしてしまえという考え方が、No UIの根本的な発想としてあります。カスタマイズがしたいのであれば、自らプログラミングをしてもらう。その代わりに、プログラミングのハードルを極限まで下げました。それがMOONBlock*4なのです。ペンで書くという行為は、キーボードを使うよりもはるかに簡単です。指で囲むという行為は、キーボードを使えない人でもできます。そういった行為だけで、ハイパーテキストが作れる。つまり、enchantMOONなら小学生でもプログラミングができるわけです。小学生が自由研究で使える機械として、僕らは作ったつもりです。実用的なプログラミングをビジュアル言語でやらせる機械は、世界ではじめてではないでしょうか。

 

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