No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
Topics
プロダクト

その川田工業がHRPシリーズで培った技術を元に、新たなビジネス展開を狙って投入したロボットがNEXTAGEである。NEXTAGEは2009年にコンセプトモデルが発表され、2011年から販売が開始されている。NEXTAGEのキーとなるコンセプトは、HRPシリーズから受け継いだ「ヒトと一緒に働くロボット、ヒトがいる環境で働くロボット」である。従来の産業用ロボットは、人間とは隔てられた場所で、ロボットだけが並ぶ生産ラインを前提に設計されており、そういった点でNEXTAGEとは根本的に発想が異なるのだ。NEXTAGEの最大の利点が、簡便設置と呼ばれる機能である。従来の産業用ロボットは、ロボットを台にがっちりと固定し、その位置を基準とする絶対座標で動作を指定している。つまり、ロボットを一度設置したら、配置換えなどを気軽に行うことはできない。それに対し、NEXTAGEは頭部にステレオカメラを搭載しており、画像認識によって周囲の物体に貼られたマークを判断し、そのマークを基準とした相対的な座標によって動作を指定することができる。NEXTAGEでは、マークの識別さえできれば、ロボット自身の位置や向きが多少変わっても、問題なく作業が行えるわけだ。移動用のキャスターと取っ手も用意されており、一人でも容易に場所を移動させることができるようになっている。例えば、昼間と夜間では別のラインで利用する場合なども、NEXTAGEを移動させることで対応が可能。つまり、NEXTAGEは"融通が利く"ロボットなのだ。「いろいろ使い回しができることが、NEXTAGEの特長です。そのような使い方をすることで、長期的なメリットがあると思います」(川田工業株式会社ロボティクス事業部営業部 藤井洋之氏)

また、NEXTAGEは、「ヒトと一緒に働くロボット」ということで、安全性についての配慮も十分になされている。一般的な産業用ロボットは、高出力モーターを搭載し、重量物のハンドリングが可能なものが多い。一方、NEXTAGEに使われているモーターの出力は80W以下であり、労働安全衛生規則上の安全柵設置義務はない。その代わり、可搬重量は片腕で1.5kg、両腕で3kgまでに制限されている。また、85~264VまでのAC電源に対応し、通常の100VのAC電源で動作することも特徴だ。特別な電源工事を行う必要がないので、町工場などにも導入しやすいのだ。

川田工業が販売している次世代産業用ロボット「NEXTAGE」。頭部にステレオカメラを搭載し、周囲との相対位置を認識する。(上)組立部品の位置、向き、裏表を頭部とハンドのカメラで見て認識し、ハンドでつかみ取る。(下)の写真
[写真] 川田工業が販売している次世代産業用ロボット「NEXTAGE」。
頭部にステレオカメラを搭載し、周囲との相対位置を認識する。(上)
組立部品の位置、向き、裏表を頭部とハンドのカメラで見て認識し、ハンドでつかみ取る。(下)
動作の精度は高く、電動ドライバーを掴んで、ネジを締める写真
[写真] 動作の精度は高く、ハンドを切り替え、電動ドライバーで、ネジを締めることもできる

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.