No.003 最先端テクノロジーがもたらす健康の未来 ”メディカル・ヘルスケア”
Scientist Interview

バーチャル・ケアセンターの建設と未来

バーチャル・ケアセンター完成予想図(夜バージョン)の写真
[写真] バーチャル・ケアセンター完成予想図(夜バージョン)

──バーチャル・ケアセンターの建物の完成予想図もありますが、その規模などはどう決められたのでしょうか。

もちろん、こういったことが必要になるだろうという予測の元に決めたわけですが、新しい試みですから正確にはどんな規模が正しいのかはわからないままです。それに、バーチャル・ケアセンターですから、eICUはこちらに、特別ケアはあちらにと別々のところに散在させ、何も建てないということもあり得たのです。ただ、実際に建物があれば、人々がここへ来てどんなことをやっているのかを視覚化できるという利点はあります。

──新たな人材も雇うわけですね。

医療とは無関係な人材も必要です。先日面接をしたのは、政府のためにコンピューターの三次元環境を作っていた人物で、無人航空機の攻撃をシミュレーションできるプログラムを書いていました。また生物測定学の専門家もいて、誰が心不全を起こすかという予測モデルを作っています。ケア・マネージャーや医師、看護士も含めて最終的には2000人ほどが働く組織となる計画です。

──バーチャル・ケアセンター実現に際して、障害となることは何ですか。

医療は州法に基づいて運営されています。州の間で法律自体にそれほどの違いはないのに、バーチャル・ケアを実施するには州ごとに認可を得なければなりません。つまり、現在の医療制度は遠隔医療には向いていないのです。いずれは追いつくことでしょうが、しばらくはそれに合わせるしかありません。

──バーチャル・ケアセンターは、マーシーの革新医療センターの事業のひとつということですが、他にはどんなことを手がけているのですか。

ひとつは、医療におけるワークフローを変化させることです。メディカル・ホーム(個人医院がハブとなってバーチャル・ケアも含めた医療を提供すること)やチーム医療などが、それにあたります。また法改正を求める働きかけも行っています。ですから、テクノロジーに関することばかりではありません。革新とは変化のこと、「イノベーションとは医療に変化を起こすこと」だと、われわれはとらえているのです。

Profile

トーマス・H・ヘイル

ミズーリ大学医学部卒業。30年以上にわたって、ミズーリ州のマーシー・ヘルスシステムズに関わり,そのほとんどは内科の臨床医として患者を診察してきた。2009年に、同ヘルスシステムズ内で創設されたセンター・フォア・イノベーションケア(革新医療センター)のメディカル・ディレクターとして就任。地域医療を先端技術によって向上させることを目的に、遠隔医療技術の実用化を推進してきた。同センターは、すでに世界最大規模のeICU(電子ICU)システムを構築、バーチャル・ケアセンターの完成が注目されている。

Writer

瀧口 範子

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。上智大学外国学部ドイツ語学科卒業。雑誌社で編集者を務めた後、フリーランスに。1996-98年にフルブライト奨学生として(ジャーナリスト・プログラム)、スタンフォード大学工学部コンピューター・サイエンス学科にて客員研究員。現在はシリコンバレーに在住し、テクノロジー、ビジネス、文化一般に関する記事を新聞や雑誌に幅広く寄稿する。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』(TOTO出版)『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(TOTO出版)、訳書に 『ソフトウェアの達人たち(Bringing Design to Software)』(アジソンウェスレイ・ジャパン刊)、『エンジニアの心象風景:ピーター・ライス自伝』(鹿島出版会 共訳)などがある。

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