No.003 最先端テクノロジーがもたらす健康の未来 ”メディカル・ヘルスケア”
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スマートフォン関連のヘルスケア製品やサービスは、たくさんのデバイスメーカーとソフトウェアメーカーが開発を続けているが、ヘルスケア専用のスマートフォン、という商品まで準備されている。英国の"ライフウォッチⅤ"というスマートフォンで、再来年の発売を予定している。デフォルトの機能としては、体温、心拍数、心電図、血糖値、体脂肪、血中酸素飽和度などの数値を計測できる。別売りのキットや追加デバイスなどで、さらに高機能の医療検査機器としての機能が持てるようになるという。

ヘルスケア専用スマートフォン LIFEWATCH Vの写真
[写真] ヘルスケア専用スマートフォン LIFEWATCH V

スマートフォンは、ユーザーが常に肌身離さず持っているため、そこに計測の仕組みがあれば、いつでも健康データを取得することができる。計測がリアルタイムに近づき、計測データの量が多ければ多いほど、そのデータをもとにして、正確な診断や予防、そして治療ができるようになる。今後、ヘルスケアデバイスは、より小さく、軽く、ネットワーク化していくことで、ますますスマートフォンとの連携が増えていくだろう。これも、病院で行なっていた治療や検査を、個人の側に、身近に、いつでも、という方向性の進化である。

ヘルスケアデバイスの共通規格「コンティニュア」

これまで見てきたようなヘルスケアデバイスの通信用共通規格として、コンティニュア規格という通信規格が整備されている。パーソナル・ヘルスケアの質的向上のために、健康機器や医療機器のデジタル化促進と通信機能の規格の統一を目標に設立されたものだ。データ構造は、既存の健康機器でも利用されてきたIEEE11073規格を利用し、PCやデバイスとの通信規格を有線ではUSB、無線はBluetoothとZigbeeを採用している。

国内では、オムロンヘルスケア、シャープ、東芝、富士通、パナソニック、タニタ、エー・アンド・ディーなどのヘルスケアデバイス開発に携わるメーカーをはじめ、ソフトウェアや通信関連企業など多数が参画。海外ではインテルやIBM、グーグルなどの大手IT企業をはじめとして、240社を超えるベンダーが、コンティニュア・ヘルス・アライアンスに参加している。コンティニュア規格による通信環境の標準化は、メーカーの垣根を超えて、デバイス同士、またPCやスマートフォン、そしてインターネットとの接続を可能にする。コンティニュア・ヘルス・アライアンスは、こうした規格の統一を、「ヘルスケアのインフラの構築」と表現し、「慢性疾患管理」「予防的な健康管理」「高齢者の自立生活」の3つの対象領域に貢献するとしている。コンティニュア規格は、ヘルスケアデバイスの事実上の標準規格となっており、今後対応デバイスは拡大するだろう。

これまで見てきたように、ヘルスケアデバイスの進化はより小さく軽くなり、デジタル化とネットワーク化の進化によって、個人が健康データを計測・保存し、そのデータを活用することを可能にした。デバイスが取得したデータは、インターネットを通じて、家族や医療機関などとシェアすることもでき、分析や診断など、的確なアドバイスはより身近なものになってきている。Nike+Fuelbandのようにアクセサリーのような存在として、あるいはスマートフォンヘルスケアアプリのようにいつもユーザーのそばにある存在として、私たちの普段の生活の中に、自然な形で共存をはじめたヘルスケアデバイスたちは、人間に寄り添うようにして、これからも進化していくだろう。

[ 脚注 ]

*1
2010年にSL-501を発表、2012年にはソフトウェアをバージョンアップさせたSL-502/503を発表。
*2
http://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/lifestyle/intelligencetoilet/

Writer

淵上 周平

1974年神奈川県生まれ。中央大学総合政策学部にて宗教人類学を専攻。
編集/ウェブ・プロデュースを主要業務とする株式会社シンコ代表取締役。

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