No.007 ”進化するモビリティ”
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どうやって低減するか

D-SENDプロジェクトを推進しているのは宇宙航空研究開発機構(JAXA)。コンコルドには前述のように、経済性の問題と環境適合性の問題があったが、D-SENDプロジェクトで解決を目指しているのは後者の問題だ。目標はソニックブームを0.5psf*1以下、つまりコンコルドの1/4以下に抑えることである。

この目標を実現するために、JAXAが想定しているのは全長50m、乗客50人程度の小型機だ。本来、旅客機のサイズは市場ニーズを見極めて決めるのが本筋であるが、機体重量が増えるとそれだけソニックブームも強くなる。2020年代後半あたりに就航できるよう、現在の技術で考えると、機体サイズはこのくらいに抑えるのが現実的という判断だ。

JAXAが想定している小型超音速旅客機の写真
[写真] JAXAが想定している小型超音速旅客機。巡航速度はマッハ1.6だ(提供:JAXA)

さらにソニックブームを削減するために、機体の形状を工夫している。コンコルドでは、機体の前方と後方で発生した衝撃波がそれぞれ統合して大きな「ドドン」という騒音になっていた。なるべく衝撃波が分散するようにすれば、統合を遅らせて、衝撃波のピークを小さく抑えることができるのだ。

JAXAは機体の先端、および後端において、ソニックブームを低減するための設計手法を開発。これには、スーパーコンピュータによる解析技術が使われているが、本当にソニックブームを低減できるかどうかは、実際に機体を作って確認するしかない。D-SENDの第2フェーズ(D-SEND#2)では、全長8m、重量1tの試験機を製造し、滑空飛行を行っている。

設計の概要の写真
[写真] 設計の概要。機体後端のうねりは、衝撃波の統合を抑えるための形状だ(JAXA資料 http://www.jaxa.jp/press/2014/03/20140312_dsend2_j.pdf より)

この試験機にエンジンは搭載されていないので、大きな気球に吊り下げて上空に運ぶ。高度30kmで気球から分離し、落下することで超音速まで加速する。マッハ1.3をキープしながら、下向き50度で飛行することで、衝撃波を真下に飛ばし、その大きさを地上の計測システムと、係留気球から吊り下げたマイクで観測するのだ。

試験機にはGPSが搭載されており、分離されてからは、自分で経路を考えて飛行する仕組み。計測地点の上空を通過したあとは地上に落下させ、回収はしない。

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