No.007 ”進化するモビリティ”
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世界一の自転車都市を目指すコペンハーゲン

EUでも有数の自転車先進国であるデンマーク。1990年代に自転車安全戦略を制定し、世界に先駆けた政策を打ち出してきた。通勤時に自転車を利用すると所得税の申告時に控除がうけられる制度をつくり、控除額は走行距離に応じて大きくした。また企業は車内に駐輪場を設置すると税優遇措置を受けることができる。そんなデンマーク最大の都市であるコペンハーゲンは、「世界一の自転車都市になる」というスローガンをかかげ、2015年までに以下のような具体的な目標を設定している。

  • ・自転車で通勤・通学する人の割合を50%にする(2010年で35%)
  • ・死亡または重症の自転車事故数を2005年比で5割以上減らす
  • ・自転車利用者の8割が安心して走れる都市にする

次の図はコペンハーゲンの交通資源の分配をわかりやすく示したもので、自動車が占めていた利用領域を、自転車を含めた他の移動手段に大きく振り分けていることがわかる。

 

たとえば、自動車の駐車は建物内の駐車場に限り、路上駐車は認めないこと。自動車の速度や通行エリアを規制し、逆に自転車エリアを拡大すること。駐輪場の設置を義務づけること。また、朝の6時30分から12時までの市内中心部の一定区間で、時速20kmで走行するとノンストップで区間通過が可能なように、信号の切り替えが設定されているという。こうしたコペンハーゲンにおける自転車中心の都市デザインについては、以下のムービーでもその概要がわかる。

冬は雪があるコペンハーゲンだが、自転車レーンの除雪も優先的に行われている。雪が降りしきる中、自転車で移動する人々の群れ、というのは日本では考えられない風景ではないだろうか。

コペンハーゲンの自転車中心の都市設計で、中心的な役割を果たしたのが、都市デザイナーであるヤン・ゲールという人物。ロンドンやシドニー、ニューヨークの公共空間デザインにも参加するなど、コペンハーゲンで行った未来の都市設計を世界に展開している。彼は、自転車、そして歩行者を中心とした都市の再デザインを"コペンハーゲン化(Copenhagenize)"と呼んでいる。EUの小さな都市で試みられた自転車の未来の姿は、これからも世界に広がっていくだろう。

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