No.007 ”進化するモビリティ”
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夢の完全自動運転に向けて、一歩先んじるグーグル

これまでのクルマにもIT技術は多数搭載されていたが、これらの技術は基本的に自動車メーカーが主体となって開発されていた。しかしここ数年、ITを本業とする会社が自動車業界に積極的に関わり出てきている。

その代表として挙げられるのが、グーグルだ。グーグルは、いわずと知れた検索エンジンやクラウド・コンピューティング、ソフトウェアなどのインターネット関連のサービスや製品を提供している巨大IT企業であるが、最近は日米の有力なロボットベンチャーを次々と買収するなど、ロボット技術にも力を入れている。また、周囲の自動車や歩行者などを認識して、交通状況に応じた的確な運転を行い、乗っているだけで目的地まで連れて行ってくれる自動運転車(セルフドライビングカー) の実現を目指す「セルフドライビングカー・プロジェクト」に多額の資金を投入している。トヨタや日産、アウディなど、名だたる自動車メーカーが完全自動運転技術の開発にしのぎを削っているが、その投入時期に関して明言している自動車メーカーは、今のところ存在しない それに対し、グーグルは、2012年8月に自動運転車のプロトタイプの累計走行距離が無事故で30万マイル(約48万km)に達したことを発表。その後、グーグル本社がある米国カリフォルニア州マウンテンビューの市街地における実証実験を開始し、累計走行距離は70万マイル(約113万km)を超えた。当初は、レクサスなどの市販車をベースに開発していたが、2014年5月には、市販車ベースではなく一から開発した新型の自動運転車を発表している。この新型自動運転車には、これまでの実証実験で培ってきた制御システムが搭載されており、屋根部分には周囲360度をカバーできるレーザースキャナーを搭載している。自動運転車として一から設計されているため、ハンドルやアクセル、ブレーキは用意されておらず、代わりに行き先を指定するタッチスクリーンと走行開始ボタン、停車ボタンが用意されている。グーグルは、この自動運転車を約100台製造し、2014年夏に走行テストを始めた(ただし、走行テストの際にはドライバーによる運転操作が可能な機能を持たせた車両を使う)。グーグルは、自動運転車を2017年から2020年の間には市場に投入する予定としており、自動車メーカーよりも一歩先を進んでいるといえる。完全自動運転の実現に必要不可欠な、高度な画像処理技術や人工知能技術を得意としている点がその理由だろう。自動車メーカーも同様の技術開発に取り組んではいるが、グーグルに追いつくのは容易なことではなさそうだ。

グーグルが開発中の自動運転車のプロトタイプの写真
[写真] グーグルが開発中の自動運転車のプロトタイプ。レクサスRX450hをベースにしている
グーグルが一から開発した新型の自動運転車の写真
[写真] グーグルが一から開発した新型の自動運転車。二人乗りのコンパクトカーだ

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