Science News

スマートな指サックが、
ロボットや医師に触覚を伝える

2012.10.22

シリコーンゴムでできた指サックに、センサーなどが埋め込まれている。
シリコーンゴムでできた指サックに、センサーなどが埋め込まれている。
Photo Credit: John Rogers/University of Illinois at Urbana-Champaign

超薄型のデバイスが、皮膚感覚をバーチャルに伝えるようになるかもしれない。
米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のJohn ogers教授らが開発したのは、いわば「スマート」な指サックだ。John Rogers教授は、超薄型デバイスを研究していることで知られ、2011年にはタトゥーシールのようなデバイス「EES(Epidermal Electronic System)」を発表している。
今回発表された指サック状のデバイスは、圧力を受けた時の感覚を電気刺激として皮膚に伝える機能を持っている。
電気刺激を使って触覚を伝えるデバイスは視覚障害者用の点字ディスプレイなどが開発されているが、これらはあくまでも硬くて平面的である。
これに対して、スマート指サックの構造は極めて柔軟性が高い。金の導電線と、ポリイミドという柔軟性の高いポリマーに一体化させたシリコンの極薄シートを、指をかたどったシリコーンゴムに転写して作っている。
指サックに圧力がかかると電流が流れ、例えば、指サックを付けた状態で机などの表面に触れると、指先に少しチクチクする感じがするのだという。現在はたんなる圧力を電気刺激に変換しているだけだが、将来的に研究チームは、物体の熱や手触りも再現することを目指している。
このように指先の感覚を再現できるデバイスは、多彩な応用が検討されており、特に医療分野への展開が期待されている。スマート指サックあるいはスマート手袋を使って、医師がロボットによる遠隔手術を行ったり、研修医が熟練者のテクニックを学べるようになるかもしれない。また、John Rogers教授によれば、火傷などで皮膚を失った人が感覚を取り戻すのに使える可能性もあるという。

(文/山路達也)

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