Science News

太陽熱で動作するDNA検査装置が、
途上国の患者を救う

2014.4.7

赤いボックスが、太陽熱を使ったPCR装置。解析はスマートフォンのアプリを使って行う。
Credit: Jason Koski/University Photography

途上国における医療の大きな課題は、電力などのインフラが整っていないことだ。先進国では当たり前のように行える検査ができないために、病気を初期段階で見つけることができず、結果的に治療が手遅れになってしまうことが多い。例えば、サハラ以南のアフリカでは、ヘルペスウイルスによって引き起こされるカポジ肉腫(末期のエイズ患者が発症することでも知られる皮膚ガンの一種)による死亡率が高い。カポジ肉腫は早期に発見できれば治療も可能だが、精度の高い検査装置は電力消費も大きいため、発展途上国ではなかなか利用できないのである。
コーネル大学とウェイル・コーネル・メディカル大学の研究チームは、太陽熱を利用することで、少ない電力でも動作する検査装置を開発した。
通常、ウイルスなどの検出にはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)装置が使われる。PCRによってわずかなDNAサンプルから特定の断片だけを増幅させることができるのだが、一般的なPCR装置は50℃から100℃の範囲で温度をコントロールする必要があり、安定した電力供給のないところでは使えない。
コーネル大学の研究チームが開発した装置は、太陽光をレンズで集めて熱源にする。集光されて高温になっている部分にDNAサンプルを出し入れすることで、温度を調節するシンプルな仕組みだ。DNAサンプルにサイバーグリーンという色素を加えることによって、特定のDNA配列が緑の蛍光を発するようになるため、あとは発光の様子をスマートフォンで撮影し、専用アプリで解析を行えばウイルスの有無を判別できる。
研究チームによれば、この装置による検査は1回当たり30分以内で完了し、消費電力も80mW程度。従来方式の最新鋭装置に比べて100分の1で済むという。

(文/山路達也)

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.