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3Dプリンティングで、
水より軽く鉄より強い材料を作り出す

2014.4.14

コンピュータシミュレーションを元に、3Dプリンティングで新しい材料を直接作り出せるようになってきた。

フィギュアからエンジン部品、建造物まで、3Dプリンティングによってさまざまなものが作れるようになってきた。これらは既存の材料を3Dプリンターで出力して作られるわけだが、3Dプリンティング技術を使って材料自体を作る研究も進んでいる。
材料を評価する重要な基準の1つは、密度と圧縮強度(試料が耐えられる、断面積当たりの最大荷重)の比率だ。これまでにも、水よりも密度が低く(つまり水に浮く)、鉄並みの強度を持つ材料が作れる可能性は検討されてきた。微細な構造を正確に作ることができれば軽くて強い材料ができると考える研究者はいたが、顕微鏡レベルの構造を実際に作ることはできなかった。
ドイツ カールスルーエ大学のJens Bauer博士らの研究チームは、3Dプリンティング技術によって、水より密度が低く、鉄並みの強度を持った材料を開発することに成功した。
研究チームは、強度の高い構造をコンピュータシミュレーションによって計算し、特殊なハニカム(蜂の巣状)構造を導き出した。そして、光を当てると硬化するポリマーに、レーザーを照射して微細構造を作成。レーザー装置はNanoscribe社が開発したもので、ナノメートル単位での加工が行える。
こうして作成した微細なハニカム構造に対して、酸化アルミニウムを50ナノメートルの厚さにコーティングして強度を高めた。酸化アルミニウム層がある状態でも、密度は1000kg/m³以下で水よりも小さい。
実験を行ったところ、最大で280MPa(パスカル)の圧縮強度を示したという。これは鉄の強度に匹敵する。
研究チームが開発した材料は数十マイクロメートル程度のサイズなので、これをそのまま何かに利用できるわけではない。しかし、材料の微細構造を、直接3Dプリンティング技術で作れることを示した意義は大きい。今後、人工骨などの分野でも、大きな進展がありそうだ。

(文/山路達也)

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