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DNAの塩基を拡張する方法が見つかった?

2014.7.7

DNAにはアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類の塩基が含まれる。しかし、塩基を追加することで、これまでに存在しなかったタンパク質を作り出せるかもしれない。
Credit: motorolka/Shutterstock

遺伝生物学の基本中の基本が、DNAに含まれる4つの塩基だ。DNAには、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基のいずかが含まれており、この塩基が対になって結合し、二重らせん構造を作っている。アデニンはチミンと、シトシンはグアニンとしか結びつかない。4種類の塩基というアルファベットの組み合わせで、あらゆる生物の遺伝情報は記述されている。遺伝情報の最小単位はコドンといい、4種類ある塩基(A)、(G)、(C)、(T)の3つの組み合わせで出来ている。4種類×3、つまり、4³=64通りのコドンが存在することになる。現在、このコドンによって20種類のアミノ酸を指定できることがわかっており、これらのアミノ酸が組み合わさったタンパク質で生物の体は作られている。
ところが、2014年5月、アメリカ スクリプス研究所のFloyd Romesberg博士らの研究チームによって、DNAの塩基を拡張できる可能性が示された。
研究チームは、アデニン、グアニン、シトシン、チミンのほかに、もう2種類の塩基を追加し、全部で6種類の塩基からなるDNAを作成。このDNAを大腸菌に取り込ませて複製したところ、新しく追加された2種類の塩基についても、従来の4種類の塩基と同じように複製されることが確認された。新たな塩基を取り込んだ細胞の成長速度がやや遅くなった以外に問題は見られなかったという。
6種類の塩基を使うことでコドンの種類は、6³=216。研究チームによれば、これによって指定できるアミノ酸は、理論的には172種類になるとのことである。しかし、今回の実験で示されたのは、塩基が6種類でもDNAの複製が可能ということにすぎない。今後、研究が進む中で、遺伝子を人工的にデザインした微生物を使い、"自然界には存在しない有用なタンパク質を作り出す"SFのような技術を実現できるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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