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3Dプリンターで、ガン研究を加速させる

2014.7.14

3Dプリンターで印刷されたガン腫瘍。培養皿よりも体内に近い条件を実現できる。
Credit: Albert Soffa

飛行機や自動車の部品、電子機器、建築など、3Dプリンターの活躍が期待されている分野は幅広い。医療も、そんな分野の1つだ。内臓を3Dプリンティングで作り出せるのはまだまだ先の話ではあるだろうが、3Dプリンターで人工骨を成形するといった取り組みはすでに始まっている。
ドレクセル大学のWei Sun博士らは、3Dプリンターを使ってガン腫瘍を研究する手法を開発した。
研究室でガン腫瘍を研究するには、培養皿で腫瘍を培養するのが一般的だ。しかし、培養皿の上で腫瘍は2次元的に広がっていくため、実際の体内でガン腫瘍が3次元的に増殖する生育条件とは大きく異なってくる。実験を元に開発された薬剤が、培養皿のガン腫瘍に対しては効いても、体内の腫瘍に対しては有効でないことも多い。
Wei Sun博士らの研究チームは、HeLa細胞(1951年に子宮頸ガンで亡くなった30代黒人女性由来の細胞株で、ガン研究で広く使われている)とハイドロゲルの混合物を作成。3Dプリンターのノズルのサイズや、圧力、粘度、温度などの条件を調整して射出することで、立体的なモデルを作成することに成功した。
作成されたモデルの中で90%のガン腫瘍は生きたままの状態にあり、さらに8日以内に楕円体の形状へと成長することも観察された。従来の培養皿よりも、体内の状況に近いため、創薬などの治療法研究を効率化できる可能性がある。
研究チームでは、この3Dプリンターによる腫瘍モデルをよりリアルな腫瘍に近づける取り組みを行っており、異なる種類の細胞を含んだ腫瘍の作成や、体組織・血管などを追加していく予定だという。

(文/山路達也)

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