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自己修復機能するポリマー素材が、続々と登場

2014.7.28

イリノイ大学の研究チームが開発した、自己修復機能を備えたポリマー素材。貫通する穴が空いても、自然にジェルが広がって穴を塞ぐ。
Credit: Ryan Gergely

材料工学の分野では、「自己修復」がホットなテーマとなっている。特にポリマー(分子が長い鎖状に連なった化合物)で、新素材の発表が相次いでいる。
2013年に、スペインIK4-CIDETECのIbon Odriozola博士らが開発したゴム状のポリマー素材は、ナイフで半分に切ったあと、2時間ほど断面をくっつけておくだけで完全に融合して元通りになる。特に熱や光を加える必要はなく、室温で自己修復が行われる。
2014年5月にIBM研究所が発表したのは、骨よりも強く軽量で、100%リサイクル可能なポリマーだ。このポリマーは亀裂が入った場合、自然に亀裂を修復する性質を備えている。また、このポリマーを強い酸性の液体にさらすと、分解が進み、原材料に戻して再利用することも可能だ。
同じく2014年5月には、イリノイ大学のScott White教授らの研究チームも、自己修復機能を備えたポリマー素材を発表している。こちらのポリマーの特徴は、貫通するような大きな穴が空いても修復が行われること。この自己修復機能は、生物の毛細血管にヒントを得ている。ポリマー素材の内部には、血管のような2本の細管が並行して通っている。素材が損傷すると、細管の中を2種類の液体が流れ、損傷部分で混じり合ってジェル状になる。時間の経過と共に、ジェルは硬化して損傷部分を修復する仕組みだ。
こうした自己修復機能を備えた素材は、幅広い分野での応用が期待されている。身近なところでは、電子機器のボディやケース、おもちゃなどの需要がありそうだ。自動車のバンパーなどに使えば、ちょっとした事故でいちいち部品を取り替える必要もなくなる。ロボットや義肢の表面を覆う素材にも、こうした素材が使われることになるだろう。また、航空機やロケットなどの交換がしづらい箇所にある部品に自己修復機能を持たせることで、メンテナンス性と安全性を同時に高めることができるかもしれない。

(文/山路達也)

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