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水の膜で曇りを防ぐ、新発想のコーティング技術

2014.8.18

新開発のコーティングを施した側(右)には、薄い水の層ができて曇りを防いでいる。

車のフロントガラス、浴室の鏡、ゴーグル、オープンのドア等々、曇ってほしくない器材は、世の中に山のようにある。曇りを防ぐために一番よく用いられるのが撥水性のコーティングだが、問題点は耐久性の低さ。撥水性を維持するためには、定期的にコーティングし直さなければならない。
他にも、水をはじいて曇りを防ぐのではなく、水と馴染みやすい「親水性」を使ったコーティング技術もある。親水性コーティングに使われる代表的な物質が酸化チタンだ。酸化チタンは紫外線に当たると親水性が高まり、その表面で水は水滴にならず膜状に広まるようになる。酸化チタンは汚れを分解する触媒としての機能も持っており、汚れがついても雨水などで自然に洗い流されるセルフクリーニング効果を実現できる。ただ、酸化チタンのコーティングを行うには、600℃程度の高温が必要なため、適用できるのはガラスなどの硬い素材に限られてしまう。
A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)傘下のIMRE(材料研究・工学研究所)が2014年6月に発表した「CleanClear」という技術は、上記の課題を解決しているという。
CleanClearも酸化チタンのコーティングと同様、有機材料を使わないセラミックコーティング(材料の表面にセラミックの薄い膜を作る)技術だが、100℃以下で処理できるのが大きな特長だ(技術的な詳細は明らかにされていない)。このため、ガラスや陶器などのほか、プラスチックにもコーティングを施すことができる。CleanClearでコーティングされた材質の表面には、薄い水の膜が形成され曇りを防ぐようになる。酸化チタンのコーティングとは異なり、CleanClearは光を当てる必要がなく、夜間や光量の少ない屋内でも親水性が維持される。
研究チームによれば、CleanClearは一度施せば効果は永久的に持続するため、従来よりも製造コストを大幅に抑えられるという。

(文/山路達也)

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