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指で指した文字を読み上げるウェラブルデバイス

2014.9.1

指で文字をなぞると、その箇所を読み上げてくれるFingerReader。

私たちは膨大な量の情報に囲まれて暮らしている。だが、ほとんどは文字や映像などの視覚情報として存在するため、視覚障害を持っている人はこれらの情報にアクセスすることができない。視覚障害者向けの点字や音声コンテンツの量は限られており、それが教育や就労の上で大きな課題になっている。だが、ITの進化によって、視覚障害者も低コストに視覚情報へアクセスできるようになりつつある。
MITメディアラボのインターフェイスグループが開発したのは、FingerReaderというウェラブルデバイスだ。このデバイスを指にはめ、本の読みたい箇所をなぞると、デバイスのカメラが文字を認識し読み上げてくれる。行の始まりや終わりの場所、また指が行からずれた場合には、デバイスが振動してユーザーに通知するようになっている。弱視の人だけでなく、老眼の補助、さらには外国語学習の支援など、応用範囲は広そうだ。文字認識機能を備えたペン型スキャナはさまざまなメーカーからすでに販売されているが、FingerReaderはより小型で、自然な操作感を実現していること、さらにテキスト位置などをユーザーにフィードバックできることが利点といえるだろう。
また、オーストラリア カーティン大学のIain Murray博士らは、文字だけでなく数式などの要素も読み取って、音声に変換するデバイスを開発した。デバイスのサイズは、20×15×3cmほどで、どのような順番で文字や画像のブロックを読んでいくかを適切に判断し、頭出しができるチャプターのついた音声フォーマットに変換する。
こうしたデバイスに使われている文字認識などの技術自体は必ずしも目新しいものではない。しかし、Arduinoを始めとするラピッドプロトタイピング(迅速に試作を行う手法)環境が普及したことで、低コストでデバイスを開発できるようになり、クラウドファンディングによって開発資金の調達も容易になってきている。福祉関係の情報機器はどうしてもコスト高になりがちだったが、こうした常識も大きく変化していくことになりそうだ。

(文/山路達也)

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