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金属資源を植物から収穫する

2014.10.31

将来は、ニッケルなどの金属資源を植物から採取するようになるかもしれない。
Photo by Materialscientist

一部の植物に重金属を体内に取り込む性質があることは、あまり知られていない。こうした植物は「ハイパーアキュミレーター」といい、このハイパーアキュミレーターを利用した資源回収(ファイトマイニング)や環境浄化(ファイトレメディエーション)の研究が世界各地の研究機関で進められている。
理化学研究所で進められているのは、ヒョウタンゴケを使った重金属排水処理システム。ヒョウタンゴケには金や鉛を取り込む性質があり、重金属の溶出液をコケの入った容器に流し込むと、乾燥重量の70%も鉛を取り込む。
また、2014年にフィリピン大学ロスバニョス校の研究者がルソン島の西部で発見した「リノレア・ニコリフェラ(Rinorea niccolifera)」という草は、葉の中にニッケルを蓄える。蓄積されるニッケルの量は18,000ppm(=18,000mg/L)で、これは従来知られていたハイパーアキュミレーターの数百倍に当たる。
ちなみに、ハイパーアキュミレーターは、細胞内の液胞に金属を蓄え、細胞の残りの部分を金属の毒性から守っている。また、重金属を蓄積することで、防御用のタンパク質を作ることなしに、害虫による食害を防げるという利点もあるらしい。
豪クイーンズランド大学のAntony van der Ent博士によれば、ハイパーアキュミレーターは金属採掘ビジネスに高い収益性をもたらす可能性があるという。実証実験では、鉱山廃棄物が堆積した土地や鉱脈でハイパーアキュミレーターを育成。土壌中の金属を吸い上げて蓄積したハイパーアキュミレーターを収穫・焼却すると、10〜25%のニッケルを含む高純度の「バイオ鉱石」が得られ、1年間で1ヘクタール当たり200kgのニッケルを採取することができたという。
ハイパーアキュミレーターを活用することで、従来の採掘法には適さなかった鉱脈からも金属資源を採取できる可能性がある。特にニッケルは1トン当たりの価格が約20,000ドルになるため、発展途上国においては重要な収益源になりえるだろう。

(文/山路達也)

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