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シリコンの1000倍高速、
相変化物質を使ったプロセッサ

2014.11.10

次世代の不揮発性メモリが登場することで、コンピュータのアーキテクチャは大幅に変化することになる。
Photo by Appaloosa

コンピュータ分野におけるホットなテーマの1つが、「次世代不揮発性メモリ」の開発だ。
パソコンなどの主記憶装置に使われているDRAMは電源を切れば内容が失われてしまう揮発性メモリである。一方、メモリカードなどに広く使われるようになってきたフラッシュメモリは電源を切っても内容が消えないため、不揮発性メモリという。しかし、フラッシュメモリはDRAMに比べてデータの読み込み/書き込み速度が遅いため、そのままではDRAMの代わりにはなり得ない。そこで現在のパソコンやスマートフォンは、主記憶のDRAM上に演算結果をいったん記録し、それを外部記憶であるフラッシュメモリやハードディスクにコピーする仕組みになっているのだ。
この、フラッシュメモリに代わる高速の次世代不揮発性メモリの候補として、カルコゲナイドガラスという相変化物質を材料とする相変化メモリがある。相変化物質は、加熱と冷却によって、結晶相かアモルファス相(ガラスのような状態)のいずれかの状態をとる物質のことで、メモリは、状態の違いによって電気抵抗が変化し、これによって「0」もしくは「1」のデータを記録する。
2014年9月に、英ケンブリッジ大学、シンガポールのA*STAR(技術研究庁)、シンガポール工科デザイン大学の研究チームが発表したのは、相変化を利用して演算を行うプロセッサ。これまで、プロセッサの処理能力を増すには演算回路の数を増やすか演算回数を増やす必要があるが、シリコンベースのプロセッサは微細化の限界が近づいており、これ以上の処理能力向上が難しいと考えられてきた。論理演算回路とメモリの機能を兼ね備えた相変化メモリ・プロセッサならば、演算結果がそのままメモリに格納され、別の場所にデータをコピーしたり展開したりする必要がない。メモリ間のデータ転送も少なくなるため、現在のノートパソコン用プロセッサの500〜1000倍の処理能力を実現できるという。また、常に電流を流しておかなければならないDRAMに比べ、消費電力も大幅に削減できる見通しだ。

(文/山路達也)

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