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模造品の摘発やガン診断に使える、
超微細な2色バーコード

2014.12.8

A*STARのXiaogang Liu博士らが開発したカラーバーコード。緑の本体+赤のカラーチップ以外にも、多様な色の組み合わせが可能だ。 Reproduced, with permission, from Ref. 1 © 2014 American Chemical Society

肉眼では見えない超微細なカラーバーコードを使って、模造品の識別やガン細胞の診断が行えるようになるかもしれない。
シンガポールA*STARのXiaogang Liu博士らは、ランタノイド系元素がドーピング(ごくわずかな量を添加すること)されたフッ化物を使って、2色のカラーバーコードを作ることに成功(http://www.research.a-star.edu.sg/research/7080)した。
フッ化物の中でも、NaYF₄という化合物のナノ粒子は発光効率がよいことで知られている。研究チームは、NaYF₄にドーピングするガドリニウムの濃度を調整することで、棒状の結晶の長さを調整。そして、やはりドーピングするイッテルビウムとエルビウムのイオン濃度を調整し、赤、青、緑のカラーバリエーションを作った。さらに、半導体製造プロセスで使われる結晶成長技術を使って、棒状の結晶の両端に小さなカラーチップ(素材は棒に使われているものと同じ)をくっつけた。
同じ材料、プロセスで、ドーピングの濃度を調整することにより、異なる2色の組み合わせ、長さをした棒状の結晶を大量に作ることができたわけだ。
それでは、こうして作られた棒状の結晶をどう利用するのか?
この結晶が含まれた透明インクで描いた微細なパターンに赤外線レーザーを照射し、光学顕微鏡で観察すると、特定の周波数の光でパターンが浮かび上がる。
現在紙幣の偽造防止に使われている不可視インクも紫外線などを照射すると発光するわけだが、今回の結晶を使った透明インクの場合、より拡大率の高い光学顕微鏡を使うと結晶の両端にあるカラーチップも観察できる。一見すると同じ周波数の光を放っているように見えても、精密な観測のできる環境であれば色の組み合わせの違いを識別できるので、現在の不可視インクよりもさらに偽造の難しいマーキングが可能になるわけだ。また、この棒状結晶はガン細胞に取り込ませることができ、腫瘍の様子を光学的に観察するマーキングにも使えると期待されている。

(文/山路達也)

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