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視力2000の電波望遠鏡で、惑星誕生の現場を観測

2014.12.15

アルマ望遠鏡が観測した、おうし座HL星の周囲を取り巻く塵の円盤。同心円状の間隙がはっきりと写っている。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

観測機器の進歩により、天文学で理論的に予測された現象が、実際に観測されるようになってきた。
例えば、太陽系外惑星の存在だ。1992年にアレクサンデル・ヴォルシュチャンが電波望遠鏡によるパルサー(パルス状の可視光線、電波、X線を発生する天体)の分析から最初の系外惑星を発見。2008年にはハッブル宇宙望遠鏡が、系外惑星の可視光撮影に成功している。
そして、2014年11月、アルマ望遠鏡が観測史上に残る成果を挙げた(http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/pressrelease/201411067466.html)。惑星誕生の現場を高解像度で撮影することに成功したのである。
アルマ望遠鏡(正式名称はアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)とは、南米チリのアタカマ砂漠、標高5000メートルに設置された電波望遠鏡で、66台のパラボラアンテナで構成されている。
今回の撮影対象となったのは、100万歳に満たない(星としては)若い星、おうし座HL星で、波長およそ1.3mmの電波による観測を行った。電波望遠鏡ではアンテナ同士の間隔を離すほど解像度が上がるが、アルマ望遠鏡ではアンテナの展開範囲を15キロメートルにまで広げることで、0.035秒角(角度の単位で"1度の約10万分の1")という超高解像度の観測を可能にした。この解像度は、人間の視力に換算すると「2000」であり、500km先に置かれた野球のボールの大きさが見分けられる視力に相当するという。
ちなみに、2011年にはすばる望遠鏡とコロナグラフカメラという機材によって、近赤外線での原始惑星系円盤の直接観測に成功している。この時の解像度は0.06秒角であり、今回はそれを上回る。
アルマ望遠鏡による観測の結果、おうし座HL星は塵でできた円盤(太陽系の3倍程度の大きさ)に取り囲まれており、円盤の中には3本以上の間隙があることがわかった。これは大きな惑星が形成される途中だと考えられているが、従来は100万歳未満の若い恒星の周りで、これほど大きな惑星が生まれるとは想定されていなかった。観測結果によって、今後惑星形成の理論も大きく進展することになりそうだ。

(文/山路達也)

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