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新たな同素体によって、
シリコンの可能性が広がる

2015.1.19

カーネギー研究所のチームが合成したSi₂₄は、5、6、8個のシリコン原子で構成されるリングが連なっている。
Credit: Timothy Strobel

現在使われているほとんどの半導体は、シリコン(ケイ素)をベースにしている。シリコンを精製するとダイアモンド状の構造になり、電圧の高低によって電気伝導率を制御できる半導体を作れるのだ。
幅広く使われているシリコンの半導体だが、発光ダイオードには不適だ。発光ダイオードでは、半導体内の電子と正孔(電子が不足して正の電荷を持った状態のこと)が再結合した時に強い光を放つ。間接遷移型と言われるシリコン半導体では光が放出されにくく、光ダイオードにはガリウムヒ素など直接遷移型の半導体材料が使われてきた。
ところが、カーネギー研究所のTimothy Strobel博士らの研究チームは、従来の構造とは異なるシリコンの構造を合成することに成功。直接遷移型に似た性質をシリコンで実現できる可能性を示した。
研究チームは、高圧環境でシリコンとナトリウムを合成してNa₄Si₂₄という化合物を作成。次に、真空状態でNa₄Si₂₄を熱してナトリウムを分離した。その結果できたのが、Si₂₄というシリコンの同素体(同一の元素からなる別の構造を持った物質。ダイアモンドと黒鉛も同素体の関係にある)だ。Si₂₄は準直接遷移型の性質を持っており、一般的な半導体に使われているダイアモンド状の構造を持ったシリコンよりも、理論的にははるかに高効率に光の吸収や放出が行える。また、Si₂₄は常圧環境なら少なくとも450℃までは安定しており、発光ダイオードのほか、エネルギー変換効率の高い太陽電池も作れるとのこと。資源量の豊富なシリコンが、さらなる可能性を獲得したのは朗報だ。
なお、Timothy Strobel博士らは、高圧環境を用いた同素体の精製手法を、シリコン以外の物質にも応用していく予定だという。

(文/山路達也)

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