Science News

有害物質や食物の腐敗をスマホに伝える、
安価な無線ガスセンサー

2015.2.2

MITが開発した安価なガスセンサー「CARD」。既存のNFCタグに、カーボンナノチューブでガスの検知回路を追加している。

有害なガスを検知するためのセンサーは、高価でかさばる上に、専門家でないと使えないのがこれまでの常識だった。しかし、カーボンナノチューブとスマートフォンと組み合わせることで、各種ガスのセンサー検知を極めて低コストに実現できそうだ。
MIT(マサチューセッツ工科大学)のTimothy Swager教授らの研究チームが開発したのはNFCタグを応用したガスセンサーである
NFCとは、スマートフォンなどで広く使われている近距離無線通信規格。NFC規格に対応したタグは、読み取り側機器(スマートフォンなど)からの電磁誘導で発生した電力で動作するためバッテリーも必要としない。
研究チームは、NFCタグの一部に穴を開け、手書きした回路でカーボンナノチューブをつなぎ直した。こうした作られたデバイスは、CARD(chemically actuated resonant device)と名付けられた。
ガスがCARDに接触すると、回路の伝導率が変化し、CARDとスマートフォンの間でやり取りされる電波の周波数も変化する。スマートフォン側では、この変化を読み取ってガスが存在するかどうか判断するという仕組みだ。
現在のところ1つのCARDで識別できるガスの種類は1つだけだが、将来的には複数のガスも識別できるようになる予定だ。また、NFCタグからの信号を読み取るためには、スマートフォンを数cm程度にまで近づける必要があるが、今後は無線通信規格のBluetoothを使用して通信距離を伸ばすという。
NFCやBluetoothを使ったCARDは低コストに作ることができ、信号を読み取れるスマートフォンも普及しているため、幅広い分野での応用が期待できる。多数のスマートフォンからクラウドにデータをアップすれば、広いエリアをカバーするセンサーネットワークを作ることもできそうだ。研究チームでは、食品パッケージにCARDの機能を搭載し、食品の腐敗を探知することも検討している。

(文/山路達也)

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