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血糖値を測定するタトゥーシール

2015.3.23

皮膚に貼るだけで、血糖値を測定することのできる「タトゥーシール」。皮膚に微弱な電流を流すと、血糖値に応じたナトリウムイオンがシールの電極に移動するので、この電荷を測ることで血糖値を測定する。Credit: Jacobs School of Engineering/UC San Diego

糖尿病はやっかいな病気だ。数々の食事制限に加えて、患者自身が血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)を頻繁に計測し、必要に応じてインスリンも摂取しなければならない。血糖値を測定する一般的なやり方は、指先に小さな針を刺して血液を採取するというものだが、これを不快だといやがる患者も少なくない。10年以上前には、血糖値を常時かつ簡単に測定するためのリストバンド型の器具も登場したのだが、皮膚炎を起こすトラブルがあったため市場から消えてしまった。
糖尿病患者の日常的な負担を減らすために、カリフォルニア大学サンディエゴ校Joseph Wang研究室のAmay Bandodkar氏らが開発しているのは、タトゥーシールのようなウェラブルデバイスだ。シールを患者の皮膚に貼り付けておくと、微弱な電流が流れ、皮膚細胞の間を流れるナトリウムイオンがシールの電極に移動する。ナトリウムイオンはブドウ糖を運ぶ働きがあり、シール電極の電荷を測定することで、血糖値がわかる仕組みだ。7人のボランティア(いずれも糖尿病患者ではない)でシールを試験したところ、食事による血糖値の変動を正確に捉えることができた。
現在のところ、シールによって得られたデータを、患者がそのまま読むことはできない。しかし、同校のウェラブルセンサーの研究センターでは、シールのデータをBluetooth経由でリアルタイムに医師へ転送し、クラウドにも蓄積していく仕組みを開発中である。シールは1枚当たり数セントで1日使えるというものだが、今後は耐久性を高めコストを下げられるよう、研究チームは開発を続けている。
研究チームによれば、タトゥーシール型デバイスは、運動選手の血中の乳酸濃度を測定し、体調管理を行うといった応用も考えられるという。

(文/山路達也)

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