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DNAを使って、100万年後の未来に情報を残す

2015.4.20

生物の設計図でもあるDNAを使うことで、遙かな未来にまで情報を残せるかもしれない。

100万年後の遥かな未来。人類が滅亡していたとしても、情報だけでも残すことはできないか。
約40万年前の古人類「ハイデルベルク人」の化石からDNAが抽出され、ゲノムが解析されるなど、化石からDNAが見つかるケースもある。ならば、DNAを使えば未来に大量の情報を残せるのではないか。そこで情報をデジタルデータ化し、人工DNAとして合成するという研究が、世界各地の研究機関で進められている。しかし、これまでの研究では、DNAに情報は記録できても、長期間にわたって保存できない課題があった。
スイス連邦工科大学チューリッヒ校のRobert N. Grass博士らは、シリカのカプセルを使った手法で、DNAによる長期間の情報保存を実現しようとしている
研究チームは、1291年に結ばれた「永久盟約」(この盟約によってスイスが建国された)と、アルキメデスの『方法論』をサンプルとして、これらの文書をデジタルデータ化。158のヌクレオチド(DNAを構成する単位)からなる4991本のDNAを合成した。デジタルデータは、CDやBlu-rayなどでも用いられているリード・ソロモンという方式で符号化されており、いくつかのヌクレオチドが欠けても元のデータを復元できる。
比較のため、純粋なDNAのまま固体化したもの、高分子でできたフィルターに吸着させたもの、そしてシリカの球に封入したもの、という3種類のパターンを用意し、耐久テストが行われた。60〜70℃にまで温度を上昇させたり、湿度条件を変化させて、4週間の耐久テストを行ったところ、シリカの球に封入したものが確実に情報を保持できることがわかった。これは、中央ヨーロッパの平均的な環境であれば2000年、氷点下の永久凍土なら100万年後でも完全なデータを復元できるレベルだという。ちなみに、シリカの球に封入されたDNAは、簡単なフッ素化学の手法によって復元できる。
100万年後の未来へ向けて、はたして私たちはどんなメッセージを残すことができるだろう?

(文/山路達也)

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