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布・紙・ガラス・金属にも使える、
超強力万能撥水ペンキ

2015.6.8

新開発の撥水ペンキでコーティングされた表面を転がる水滴。さっと水をかけるだけで表面はいつでもきれいな状態に保たれる。

水をはじく撥水スプレーは、ごくありふれた商品だ。雨の日に、靴や衣服に撥水スプレーをかける人も多いだろう。けれど、撥水スプレーの効果はそれほど長続きしないし、こすったりするだけでも簡単に撥水効果は失われてしまう。
英国UCL(University College London)、ICL(Imperial College London)、中国 大連理工大学の共同研究チームが開発したのは、これまでよりも圧倒的な撥水性、強靱さ、利便性を実現したペンキだ
研究チームは、酸化チタンのナノ粒子と、ペルフルオロオクチルトリエトキシシランという物質をエタノール溶液で混ぜ合わせて、撥水機能を持った透明なペンキを作成。酸化チタンナノ粒子のサイズは均一ではなく、大(60〜200ナノメートル)、小(21ナノメートル以下)の2種類が混じっている。
この撥水ペンキは、ガラス、金属から布、紙まで、さまざまな材質をコーティングできる。コーティングの仕方も、スプレーする、つけ込む、塗るなど、対象物に応じて自由に選べる。
コーティングされた材質に水を垂らすと、水滴が球になって跳ね上がるほど撥水性が高い。球になった水滴は、埃やウイルス、バクテリアなどを巻き込んで転がっていくため、強力な自浄機能も同時に実現されている。
従来の一般的な撥水コーティングは油分などの汚れが付着すると撥水性が失われることが多いが、新開発のペンキは油に漬けたあとも撥水性が保持される。
さらに、このペンキを接着剤と組み合わせると、耐久性が格段に向上する。接着剤をスプレーしてからこのペンキでコーティングすれば、紙やすりでこすったり、ナイフでひっかいたりしても撥水性が失われない。
コーティング手法の自由度が高く、適用できる材質も多様なため、幅広い分野で採用が進む可能性は高い。特に、エレクトロニクス機器の防水性能が高まれば、ウェアラブル機器の普及にもはずみがつきそうだ。

(文/山路達也)

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