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人体の動きをウェアラブルデバイスの
駆動電力に変換する服

2015.6.15

衣服に縫い付けられた液晶パネル。服を着た人が動くと発電し、液晶パネルを駆動する。

スマートウォッチ、皮膚に貼る各種センサーなど、ウェアラブル機器の市場は急拡大することが予想されている。期待の高まるウェアラブル機器だが、最大のネックとなるのはバッテリーだ。小型のバッテリーでは十分な電力を供給できないが、だからといって大きなバッテリーを搭載するとウェアラブルであることのメリットがまったく活かせなくなってしまう。
韓国 成均館大学校のSang-Woo Kim博士らが開発したのは、発電機能を備えた服だ。生地には、TNG(triboelectric nanogenerators)という技術が使われている。triboelectricとは摩擦電気のこと。プラスチックの下敷きを頭にこすりつけて帯電させ、髪の毛を立たせたことのある人は多いだろう。これは下敷きが髪の毛から電子を奪いマイナスに帯電し、その一方髪の毛はプラスに帯電して、引き合うためだ。TNGもこれと同じ原理を利用している。
TNGの生地は、複数の層で構成される。一番表面と裏面の層は、銀でコーティングされた素材。中間の層には、ポリマーでコーティングされた酸化亜鉛が含まれる。服を着用した人が動くと、銀の層と中間の層がこすれて摩擦電気が生じるので、これを取りだしてウェアラブル機器の電源として利用するというわけだ。層が多くなればなるほど、取り出せる電気も大きくなる。実験では、TNG生地によって最大170V、120μAの電気を取り出すことができ、小型の液晶パネルや乗用車のキーレスエントリーを動作させることに成功した。
現在のところ、機器を使うためには着用者が動いて発電し続けていなければならないため、研究チームは蓄電機能を備えた柔軟な生地も開発する予定とのことである。

(文/山路達也)

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