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ナノ構造が生み出す3Dイメージ

2015.8.17

アルミニウムのナノ構造によって、高精細で安価な立体映像を実現する方法が開発されている。

3Dテレビやステレオ写真では立体的に映像が表示されるが、ここで利用されているのが両眼視差だ。私たちがモノを見る時、左右の目には異なる映像が映っており、その見え方の差(両眼視差)が脳内で処理されて立体だと認識する。同じような両眼視差を平面で再現すれば、私たちの脳はやはりそれを立体だと認識するのである。
左右の目に別々の映像を映して、立体視させる方式にはさまざまな種類がある。例えば、昔懐かしい赤青メガネの立体写真は、赤と青のフィルムを使って、左右それぞれの目に別々の映像が入るようになっている。
A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)のXiao Ming Goh博士、Joel Yang博士らが開発しているのは、ナノ構造を使い、1つのピクセルに2つの異なる色を表示する方式だ。
研究チームは、数十ナノメートルの微細な楕円と四角形で構成される、アルミニウムのナノ構造を作成。このナノ構造は、入射光の偏光(電磁波の振動する方向に偏りがあること)に応じて異なる色を反射する。ナノ構造で描かれた平面映像を偏光メガネを通して見ると、立体的に見える仕組みだ。

多くの立体視の仕組みでは、左右のそれぞれの目に、反対側の目用の映像が入り込んでボケてしまう「クロストーク」という現象が発生するが、ナノ構造を使った方式ではこれが起こりにくい。また、従来の方式に比べて映像を高精細化しやすいほか、耐久性の高さや製造コストの低さといった利点もあるという。
現在は1つのピクセルで表現できる色は2つだが、3つ以上の色も表現できるとのこと。研究チームは、立体映像のほか、記憶装置や偽造防止技術への応用も検討している。

(文/山路達也)

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