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重さわずか4グラムの折りたたみロボットが、
這い回りジャンプする

2015.11.9

平面で構成されたシンプルなTribot。形状記憶合金のアクチュエータで自在に這い回り、飛び上がる。

これまでの脚や車輪で移動するロボットの概念を変えるロボットが、2015年9月に開催されたIROS(International Conference on Intelligent Robots and Systems)で公開された。
EPFL Reconfigurable Robotics Labの研究チームが開発したロボットは、重さわずか4グラムで、脚も車輪もモーターもついていない。正方形の各辺に台形の板が取り付けられているタイプと、3つの板を組み合わせたタイプがあるが、いずれも一見してロボットとは思えない外見をしている。
Tribotと名付けられたこのロボットは、クローリング(這う)とジャンピングという2つの移動モードを備えている。クローリングモードでは、板を曲げたり伸ばしたりしながら、尺取り虫のように這っていく。障害物があればジャンピングモードに切り替わり、身長の7倍もの高さにまで飛び上がる。
モーターも備わっていないのにこのような動作ができる秘密は、形状記憶合金を使ったアクチュエータ(エネルギーを物理的運動に変換する駆動装置)にある。チタンとニッケルでできた形状記憶合金は、ある一定の温度になると最初に記憶した形状に戻るという性質を持つ。
Tribotは随所に、さまざまな方向に変形するアクチュエータが仕込まれている。アクチュエータの制御は、電線に電流を流すか、ワイヤレスで送電するタイプの小型ヒーターで行う。複数のアクチュエータに電流を流して適切なタイミングで変形させることで、まるで生き物のように這い回るのだ。ジャンピングモードではバネを使うが、このバネもやはり形状記憶合金でできている。
研究チームは3Dプリンターを使ってTribotの開発を行った。平面的なパーツを組み合わせたシンプルな構造のため、輸送も組立も非常に簡単だという。
このTribotの用途はまだ決まっていないが、脚や車輪での移動が難しい、入り組んだ場所での探査などで活躍するかもしれない。

(文/山路達也)

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