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「ベイマックス」のようなロボットを、
磁性ナノ粒子で実現?

2016.3.22

磁性ナノ粒子を利用したロボットの例。磁界をかけると、左右のシートが持ち上がる。中央の説明図にあるように、このシートは左右方向に磁性ナノ粒子の鎖が埋め込まれている。Image credit: Sumeet Mishra

ロボットと聞けば、金属ボディに、歯車とモーターで動く手足というイメージが真っ先に思い浮かぶかもしれない。けれど今、最先端では柔らかいロボットの研究が注目されている。映画『ベイマックス』に登場したような柔らかいロボットなら、患者を傷つけずにケアできるし、壊れやすい精密部品の加工にも使えるなど、広い分野での応用が期待できるからだ。
ソフトロボットを動かすための方法には色々あり、例えば、空気圧を使ってヒトデのように動くハーバード大学のロボットや、光を当てると特定の方向に曲がるマテリアルをロボットに使おうという中央大学研究開発機構・池田研究室の試みがある。
ノースカロライナ州立大学のSumeet Mishra博士らが開発したのは、磁性ナノ粒子でロボットをコントロールする技術だ。
研究チームは、酸化鉄のナノ粒子を溶液中に分散させ、ポリマーを加えた。磁界をかけると、ナノ粒子は特定の方向に整列して鎖状につながる。さらに、溶液から水分を蒸発させれば、磁性ナノ粒子の長い鎖で出来たシート状のナノ複合材料ができあがる。
こうした作られたシートは、磁界をかけると特定の方向にだけ曲がる性質を持つ。鎖の向きが異なるシートを組み合わせれば、複雑な動きもコントロールできるロボットになるというわけだ。
磁性ナノ粒子を使ったロボットは、製造方法が簡単なためコストを低く抑えられるし、永久磁石や電磁石で簡易(容易)にコントロールできる。
Sumeet Mishra博士は、磁性ナノ粒子のロボットを、体内に埋め込んで外部から操作できる、安全性の高い医療デバイスなどへの応用を検討しているという。

(文/山路達也)

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