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ジカ熱防止の切り札になるか?
マイクロソフトのハイテク蚊取りプロジェクト

2016.8.10

プロジェクトのカギとなる、ハイテク蚊取り装置。1つ1つの小部屋に蚊をおびき寄せ、該当する種類の蚊だった場合は扉を閉めて捕まえる仕組みだ。

ジカ熱の脅威が拡大している。妊娠中の女性がジカ熱に感染すると、小頭症(先天的に頭部が異常に小さくなる病気で、知能の発達が遅れる恐れがある)の赤ん坊が生まれる可能性が高まる。ブラジルなど中南米で感染が広がっており、2016年8月には米フロリダでも感染が拡大していることが発表された。
ジカ熱の病原体はジカウイルスで、蚊を媒介として感染する。そのため、ウイルスを持った蚊がどこにいるかを把握し、適切に駆除することが不可欠だ。
マイクロソフトの研究部門は、2015年からプロジェクトPremonitionを推進していた。これは最新技術を使って感染症(2015年時点は対象の感染症はエボラ熱だった)を抑えようというもの。
同プロジェクトでカギとなるアイテムが、ハイテク蚊取りデバイス。CO₂を放出して蚊をデバイス内部におびき寄せ、羽の動きから蚊の種類を判別。該当する種類の蚊の場合は蓋を自動的に閉めて捕まえる仕組みだ。蚊を捕まえた時間や温度などのデータは専用のサーバーに送られて、解析される。このハイテク蚊取り装置は、すでに米テキサス州ヒューストンに設置され、数百ギガバイトに及ぶデータが収集されているという。
蚊取り装置は蚊が多い場所に設置する必要があるが、この場所の選定にも最新のテクノロジーが用いられている。特別にプログラミングされた小型のドローンを飛ばし、地形や水たまり、植生などのデータを収集。データを解析して、蚊取り装置の最適な設置場所を選定するのだ。
はたして、ジカ熱を押さえ込むことはできるのか? テクノロジーの可能性に、期待したい。

(文/山路達也)

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