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注射できるほど小さなカメラを、3Dプリンターで作ることに成功

2016.9.5

光ファイバーの先端に取り付けられた超小型レンズ。光ファイバーも髪の毛2本分の細さしかない。

体内を覗く内視鏡は急速に進化しており、現在では手術用の鉗子を備えた製品も一般的になっている。薬剤と同様に、口から飲み込んで腸内を撮影するカプセル型内視鏡もすでに実用化された。
人間の体にダメージを与えない「非侵襲性(ひしんしゅうせい)」は、ハイテク医療におけるホットトピックとなっている。
2016年6月に独シュトゥットガルト大学などの研究チームが発表した、腸内の様子を探るための内視鏡レンズのサイズは、幅100マイクロメートルほどしかない。塩の粒ほどのサイズなのである。
このコンパクトなレンズは、3Dプリンターによって作成されている。ダイレクト・レーザー・ライティングという方式を採用しており、レンズの設計から製造、テストまで数時間しかかからないという。
レンズを光ファイバーに直接出力して作成した、超小型内視鏡デバイスもすでに試作されている。レンズは3.0ミリメートルの超至近距離から対象物にピントを合わせることができ、撮影した画像を1.7メートルの光ファイバーを経由して転送できることも確認された。
3Dプリンターによる出力であるため適用範囲も広く、イメージセンサーなどの上に直接レンズを出力することも可能である。
将来的には注射針に取り付けて、臓器や脳の内部を撮影するといった応用も検討されている。また、医療機器だけでなく、虫サイズのマイクロロボット、セキュリティカメラに搭載されることも十分にあり得そうだ。

(文/山路達也)

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