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ハトを使って、都市の環境汚染を測定

2016.10.31

どこにでもいるハトを利用することで、環境汚染の調査をスピーディに行えるようになるかもしれない。
どこにでもいるハトを利用することで、環境汚染の調査をスピーディに行えるようになるかもしれない。

都市部であれば、当たり前のように見かけるハト。このハトを使って環境汚染の状況を調べようという研究が進められている。
ハトの生活行動範囲は人間ととてもよく似ている。人間と同じように歩道を歩き、同じ空気を呼吸し、時には人間と同じ食べ物を食べる。特に都市部のハトは、特定のエリアで暮らすことが多く、あまり遠くまで移動することがない。何らかの環境の影響を人間が受けるなら、ハトも同じように影響を受けている可能性が高いのだ。
環境汚染の一例が鉛汚染だ。鉛はかつて塗料やガソリンなどで多く使われていたが、健康被害を引き起こすことから世界的に使用が制限されるようになった。それでも、昔のビルには古い塗料が使われていたりするため、今でも鉛による健康被害の可能性は残っている。そのため、アメリカのニューヨーク市では、鉛汚染地域の子どもたちを定期的に調査している。
カリフォルニア大学デービス校のRebecca Calisi准教授らは、ニューヨーク市のWild Bird Fundリハビリテーションセンターに運ばれてきた、病気やケガをしたハト825羽の血液サンプルを調査。その結果、子どもたちの検査結果とハトの検査結果が同じ傾向を示すことがわかった。例えば、夏になると血中の鉛レベルは上昇するという。
今後、Rebecca Calisi准教授は調査の対象を鉛以外の重金属や殺虫剤などにも広げて行く予定だという。
人間から血液サンプルを収集するのはそれなりにコストがかかるが、ハトであれば簡単に捕まえられるため、都市における環境汚染の調査を安価かつスピーディに行えるようになりそうだ。

(文/山路達也)

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