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汗で発電するバイオ燃料電池シール

2017.10.10

カーボンナノチューブで作られたバイオ燃料電池。汗に含まれる乳酸を酸化させて、発電を行う。
カーボンナノチューブで作られたバイオ燃料電池。汗に含まれる乳酸を酸化させて、発電を行う。
Copyright ©2017 Regents of the University of California

スマートフォンをヘビーに使っているユーザーは、おそらくモバイルバッテリーを持ち歩いているだろう。また、スマートウォッチを使い始めたものの、頻繁に充電しなければならないことに嫌気が差してしまった人もいるのではないだろうか。
スマートフォンのようなデバイスや、体に常に装着するウェアラブルデバイスの進化を阻む最大の壁はバッテリーだ。世界中のメーカーがより大容量のバッテリーや電力消費の少ないプロセッサの開発にしのぎを削っているが、それとは別のアプローチとして「エネルギーハーベスティング」もある。これは環境中からエネルギーを取り出して利用する技術の総称で、光や電波、熱、振動などが主に用いられる。
カリフォルニア大学サンディエゴ校、ジェイコブ・スクール・オブ・エンジニアリングの研究チームが着目したエネルギー源は「汗」。人間の汗に含まれる乳酸を酸化させて電流を発生させる酵素を使った、バイオ燃料電池を開発した。
実を言えば、人間の体液などの有機物を燃料として発電を行うバイオ燃料電池の歴史は意外に長い。20世紀初頭には、微生物を触媒として有機物から電気を取り出すことにも成功している。近年、電池やバイオの技術が進歩したために、こうしたバイオ燃料電池も改めて脚光を浴びつつある。
バイオ燃料電池の実用化には、触媒の寿命や発電能力などまだまだたくさんの課題があるのだが、ウェアラブルデバイスの電源として利用するには柔軟性、伸縮性も重要になってくる。サンディエゴ校のエンジニアは、半導体で使われるリソグラフィとスクリーン印刷技術を使って、カーボンナノチューブの陰極と陽極を作成。電池のセルは、バネ状の構造で接続されたドットの列で構成されている。バネ構造が伸縮することで、陰極や陽極を変形させることなく、電池全体に伸縮性を持たせたわけだ。また、立体構造のカーボンナノチューブを用いることで、より多くの酵素を各ドットに配置できるようになり、表面積あたりのエネルギー密度が大きく向上している。被験者の腕にバイオ燃料電池シールを貼り付けて、室内用自転車を漕いでもらったところ、青色LEDとBluetoothの通信チップを4分間動作させることができたという。
ただ、すぐにバイオ燃料電池を実用化できるというわけではない。現在陰極に使用している酸化銀は時間とともに劣化するので、より長時間使える材質が求められる。また汗に含まれる乳酸の濃度は時間が経つにつれ低くなってしまうため、濃度が高い時に生成されたエネルギーを貯蔵する仕組みも必要だという。
こうした課題が解決されれば、ウェアラブルデバイスを使うために人間がより活発に動くという、本末転倒な光景があちこちで見られるようになるかもしれない。

(文/山路達也)

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