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視覚障害者の「目」になる超音波リストバンド

2017.11.6

超音波を使って、周囲の障害物を探知する「Sunu Band」
超音波を使って、周囲の障害物を探知する「Sunu Band」

テクノロジーの進歩は、健常者と障害者の境目を曖昧にする。例えば、メガネのない時代、場所で視力の弱い人は障害者かもしれないが、メガネやコンタクトレンズがその区分を無意味にしてしまった。
そして、近年のテクノロジーは、より重度の視覚障害者にも福音をもたらすようになってきている。
2017年8月に発売された「Sunu Band」は超音波を使って人の移動を支援するリストバンドだ。リストバンドから発せられた超音波の反射によって、ユーザーの周囲にある障害物を探知。バイブレーションのパターンによって、障害物までの距離を知らせる仕組みだ。柵のようなラインをたどってユーザーの移動をナビゲートしたり、ドアや敷居などにつまづかないよう警告する機能も搭載。約4メートル先までの障害物を探知でき、スマホのアプリで探知する距離や感度をカスタマイズも可能だ。販売価格は249ドルで、日本からも購入できる。
一方、聴覚障害者のために、「感覚代行」を使ったデバイスも開発が進んでいる。NeoSensoryが開発中の「VEST」は、音を触覚に伝えるデバイスだ。聴覚センサーが捉えた音は特定のパターンに変換され、ユーザーが着用しているベストのバイブレーターを振動させる。ベストには32個のバイブレーターが内蔵されており、振動パターンにユーザーが習熟すれば周囲の細かな状況も把握できるようになるという。
現在のところ、こうしたデバイスは障害者をメインターゲットとして開発が進められているが、将来的には健常者の感覚も拡張することになってくるだろう。障害物を警告してくれたり、メッセージの内容を振動パターンで伝えてくれる機能は、スマートフォンの「次」のデバイスにもぜひ搭載してほしいものだ。

(文/山路達也)

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