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ファッション、軍事から医療まで、
期待が高まるスパイダーシルク

2017.11.20

人工的に合成されたクモの糸は、医療から軍事まで巨大な市場を生み出す可能性がある。
人工的に合成されたクモの糸は、医療から軍事まで巨大な市場を生み出す可能性がある。

生物が作り出す繊維の中でも、最も驚異的なのがクモの糸だろう。同じ太さの鋼鉄に比べて強度は5倍、伸縮率はナイロンの倍もある。
こうした特性を持つクモの糸の実用化が間近に迫っている。慶応義塾大学発のベンチャー企業、スパイバーは微生物にクモの遺伝子を組み込む手法で、量産に目処をつけた。アメリカのKraig Biocraft Laboratories社は、カイコの染色体にクモの遺伝子を導入し、遺伝子組換えされたカイコにクモの糸と似た性質の糸を産出させる手法を開発した。また、Bolt Threads社では、遺伝子を組み換えた酵母で糖質を発酵させ、スパイダーシルクのタンパク質を合成するという手法を採っている。2017年1月には、Jan Johansson博士、Anna Rising博士らの研究チームが、クモの体内で糸を合成する仕組みを模した製糸装置を発表。この製糸装置に特殊なタンパク質を投入することで、天然のスパイダーシルクと同等の繊維を従来より安価に作れるという。
スパイダーシルクの応用範囲は、非常に広い。例えば、米軍は先述のKraig Biocraft Laboratories社と、製品開発に関する契約を結んでいるが、これは軽量で強靱な兵士用のボディアーマーを開発するためである。
近年注目されるようになったのが、医療分野だ。スパイダーシルクは強靱なだけでなく、生体適合性も高くてアレルギー反応や炎症反応を起こさないというメリットがある。ノッティンガム大学では、抗生物質を緩やかに放出して、組織の成長を促進させる機能を持った次世代型の包帯を開発している。
2017年8月には、ドイツのフリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクの研究チームが、スパイダーシルクが人工心臓組織に適しているとの研究結果を発表した。実験室で合成したシルクタンパク質を塗布したフィルムを用いて、心筋細胞との適合を検証したところ、自然環境と同じ結果が得られたという。
今後は、3Dプリンティング技術を使ってスパイダーシルクの人工臓器を作成することもありえそうだ。

(文/山路達也)

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