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折り紙が広げる宇宙探査

2018.1.10

NASAのJPLで進められている折り紙プロジェクトの数々
NASAのJPLで進められている折り紙プロジェクトの数々。野球場ほどの巨大構造物から、隙間に入り込む小型ロボットまで、応用分野は多岐にわたる。Credit: NASA/JPL-Caltech

日本の折り紙は、今や宇宙探査のカギを握る重要な技術になっている。最もよく知られているのが、三浦公亮氏の考案した「ミウラ折り」だろう。長方形の紙の対角線を押す、あるいは引くだけで折りたたみができるため、人工衛星のソーラーパネルやアンテナとして実用化された。
NASAのJPL(ジェット推進研究所)では、さらにユニークな構造物を折り紙を利用して開発しようとしている。そのプロジェクトの1つが「Starshade」だ。Starshadeは、直径26メートルにもなるヒマワリのような形をした構造物で、系外惑星(太陽系の外にある恒星を回る惑星)などの探査性能を向上できると期待されている。
系外惑星を観測するためには極めて遠方からの微弱な光を精密に観測する必要があるが、宇宙空間はさまざまな星からの光に満ちていて、特定の星からの光だけを取り込むのが難しい。 そこで、Starshadeの出番となる。観測したい星と宇宙望遠鏡の間にStarshadeを展開し、余計な光が入り込まないようにするわけだ。Starshadeは野球場ほどの面積があるが、カメラの虹彩の絞りのような構造になっており、通常のロケットに搭載できるほどコンパクトに畳むことができる。
また、Transformersという月面探査のプロジェクトも進められている。これは、クレーターの影になっている部分や洞窟など、太陽光の届かないエリアを探査することが目的だ。クレーターの縁などに折りたたみ式の反射板を設置して太陽光をローバーに送ったり、氷に当てて溶かそうというのである。
さらに、PUFFER(Pop-Up Flat Folding Explorer Robot)というロボットも開発されている。PUFFERは円筒状のボディの両脇に車輪が付いているのだが、車輪をペタンと折りたたんで、大型のローバーが入れない隙間にも潜り込める。

(文/山路達也)

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