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メロディを考えるだけで作曲できる?

2018.1.22

帽子型の電極を被り、画面に表示される音符などに意識を集中させることで作曲を行う。
帽子型の電極を被り、画面に表示される音符などに意識を集中させることで作曲を行う。

体を動かさなくても考えるだけで、義肢を動かしたり、コンピュータを操作できる——。BCI(Brain Computer Interface)、あるいはBMI(Brain Machine Interface)と呼ばれる分野が活気を呈している。テスラやスペースXの創業者であるイーロン・マスクは、2017年3月にNeuralinkという会社で脳と外部のコンピュータを接続する研究を行っていることを明らかにした。また、Facebookも脳波を使ってタイピングする研究を行っていると発表している。
夢物語に思われていたBCIだが、医療の分野では着実に成果を上げつつある。2016年10月に発表されたピッツバーグ大学医療センターの研究では、四肢麻痺の患者の脳に微小な電極を埋め込み、ロボットアームを通じて触覚を感じることに成功した。
2017年9月に、グラーツ工業大学が発表したのは、BCIを用いて作曲を行うシステムだ。以前から、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を対象にした文字の入力システムは開発されていたが、グラーツ工業大学のシステムはこれを音楽制作に応用したもの。電極の付いた帽子を被った被験者が、画面上に点滅する音符や休符、コードなどに意識を集中することで入力作業を行える。実験に参加したのは音楽の知識を持った健常者ではあるが、短時間の訓練を受けたあと、すぐにこのシステムを使って楽譜の入力を行えたという。
グラーツ工業大学の研究は、ユーザーインターフェイスの作り込みによって音楽などの分野でもBCIが有効に使えることを示した。今後は、音楽、映像制作といった分野でも健常者、障害者の境目は消えていくことになりそうだ。

(文/山路達也)

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