No.006 ”データでデザインする社会”
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「ニコニコ動画」と「ピアプロ」が人気を加速

初音ミクは2007年8月にクリプトンから発売され、発売後1年間で3万9000本以上を売り上げる大ヒットとなった。初音ミクが、想定を大きく超えるヒット商品となった理由はいくつか考えられるが、中でも大きな役割を果たしたのが「ニコニコ動画」と「ピアプロ」であろう。ニコニコ動画は、ドワンゴの子会社であるニワンゴが運営している動画共有サービスであり、2007年1月にサービスを開始していた。投稿された動画に視聴者が字幕やテロップのような形でコメントを付けられる独自の機能によって、動画投稿者と視聴者が交流できることが人気を博し、急速に利用者数を増やしていったのである。初音ミクの登場は、このニコニコ動画の急成長期とちょうど重なっている、初音ミクがブレイクする大きなきっかけとなった「初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」は、初音ミク登場のわずか4日後にニコニコ動画に投稿されている。

初音ミクがブレイクするきっかけとなった「初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」の写真
[写真] 初音ミクがブレイクするきっかけとなった「初音ミクに『Ievan Polkka』を歌わせてみた」

また、ニコニコ動画には、いわゆる二次創作物(原作に登場するキャラクターを利用して第三者が二次的に創作したもの)が多く、著作権法に触れるものやグレーゾーンにあたるものも少なくない。そこで、クリプトンは2009年6月に、初音ミクなど同社のボーカロイドキャラクターを使用した二次創作のために、新たなライセンス「ピアプロ・キャラクター・ライセンス」(PCL)を制定した。PCLは、クリエイターが非営利・無償という前提の元で自由に二次創作物を作り、公開や配布を認めるというものだ。もちろん、宣伝や広告のために二次創作物を使うことや、他の人の作品を自分の物だと偽って使うこと、キャラクターの価値を下げるような使い方をすることなどの禁止事項はあるが、権利者自らが二次創作物の公開や配布を認めるというのは、画期的なことである。

また、PCLを発表する1年半前に、クリプトンは、ピアプロと呼ばれるコンテンツ投稿サイトをオープン。初音ミクを利用した創作活動の盛り上がりを受け、UGM/CGMをさらに盛り上げるために制作したサイトである。投稿されたイラストや楽曲などの作品を、非営利かつ無償などいくつかの条件を満たしていれば、会員同士で自由に利用できることがピアプロの特徴であり、健全なUGM/CGM文化の育成や活性化を目指している。これにより、例えば、ピアプロに投稿された第三者の初音ミクのイラストと、自作の楽曲を組み合わせて動画作品を作り、ニコニコ動画で発表するといったことが可能になるのだ。

クリプトンが運営しているコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」の写真
[写真] クリプトンが運営しているコンテンツ投稿サイト「ピアプロ」

キャラクターを踊らせるMikuMikuDanceの登場

ニコニコ動画とピアプロによる、初音ミク人気の盛り上がりを三段式ロケットの第一段ロケットでの加速段階とすると、MikuMikuDanceの登場は、第二段ロケットへの点火といえる。MikuMikuDanceは、クリプトンが提供するソフトウェアではなく、ユーザーが開発して無償で公開した、キャラクターの3D CGアニメーションを作成するためのソフトウェアで、初音ミクの3Dモデルが初期設定で用意されている。自動的にリップシンク(口パク)を行う機能を備えているなど、初音ミクを楽曲にあわせて自由にダンスさせることができるようになっている。このMikuMikuDanceの登場によって、初音ミクが踊る3D CGアニメーションが次々とニコニコ動画などに投稿されるようになり、さらに初音ミクの人気が加速していったのだ。

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