No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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宇宙エレベーターが実現する「2050年宇宙の旅」

  • 2013.05.31
  • 文/石井 英男

地上と宇宙を行き来する「宇宙エレベーター」。SFのようなイメージだが、コンセプト自体は決して新しいものではない。とは言え、宇宙エレベーターの実現には、非常に強度の高い材料が必要になるため、長らく概念的なものとして扱われてきた。しかし、1991年に極めて高い強度を持つカーボンナノチューブが発見されたことで、宇宙エレベーターの実現も夢物語ではなくなった。2012年2月には、大林組が、2050年に宇宙エレベーターを建築するという構想を発表し、話題を集めた。真の宇宙時代の到来には、現在の宇宙ロケットよりも、エネルギー効率が高く、安全に宇宙に物資や人間を運ぶ手段が必要になる。その有力候補である宇宙エレベーターについて、どこまで実現の目途が見えてきたのかを追う。

地上から建設するのではなく、
静止軌道上から上下にテザーを伸ばして建造する

宇宙エレベーターとは、その名の通り、宇宙と地上を行き来するためのエレベーターである。エレベーターというと、ビルなどで使われているものを思い浮かべる人が多いだろうが、宇宙エレベーターの構造は、現在、一般的なエレベーターとはかなり異なるものが検討されている。地球の周りには数多くの人工衛星が回っているが、その中に、静止衛星と呼ばれるものがあることはご存じであろう。静止衛星は、地上から約3万6000km離れた軌道(静止軌道)を回る衛星であり、地球の自転と同じ24時間で1周するため、地上からは1点に静止しているように見える。地球上の同じ地域を定点観測できることが特徴であり、気象衛星や放送衛星などがその代表だ。この静止軌道上に宇宙ステーションを建設し、その重心が静止軌道から外れないように、上下にテザーと呼ばれるケーブルを伸ばし、クライマー(昇降機)を上り下りさせるというのが、宇宙エレベーターの基本的な考え方だ。

宇宙エレベーターの基本原理の写真
[写真] 宇宙エレベーターの基本原理。静止軌道上から重心が外れないように、テザー(ケーブル)を上下に伸ばしていくと、やがて地上に到達する。地上からは静止しているように見える(宇宙エレベーター協会提供)

宇宙エレベーターの概念自体は1960年に提唱されており、決して新しいものではないが、最近までSFの世界の夢物語に思われていた。それは、全長数万kmにも及ぶテザーを作れる材料が存在しなかったからだ。長いケーブルを吊り下げようとすると、テザーが自重で切れてしまうのだ。例えば、鋼鉄製ワイヤーの場合は、せいぜい15kmが限界であり、それ以上長いテザーを吊り下げることはできない。しかし、1991年に飯島澄男氏が、カーボンナノチューブと呼ばれる非常に強度の高い新素材を発見した。カーボンナノチューブは、炭素原子1層の厚さのシート(グラフェン)が巻かれてチューブ状になった素材であり、理論的には、宇宙エレベーターのテザーに要求される強度をクリアしている。カーボンナノチューブの発見によって、宇宙エレベーターの実現可能性が一気に高まったのだ。

宇宙エレベーターの構造の写真
[写真] 現在、実現可能性が高いとされている宇宙エレベーターの構造。静止軌道ステーションの上下にステーションがあり、海上にもステーションを設置する(宇宙エレベーター協会提供)
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