No.018 特集:スマートコミュニティと支える技術

No.018

特集:スマートコミュニティと支える技術

連載01

半導体チップの再生可能エネルギーへの応用

Series Report

スマートシティの蓄電システム

これらのエネルギーは全て、再生可能エネルギーで発電した電力を基幹系統に戻すことが前提である。このため107Vの交流実効電圧と、50Hz/60Hzの周波数変動抑制が大きな問題であり、それを解決するためのインバータが必要だった。しかし、今後のスマートシティ構想をベースとした地産地消時代に入ると、家庭用や工場用の蓄電池を使うようになり、100Vの交流電圧をそのまま送ることができる。こうなると、今度は蓄電池への充電制御と電圧変換すなわちDC-DCコンバータが必要になってくるが、そこでもやはり半導体ICやパワー半導体を多く使うことになる。

スマートシティの先駆的な例として、2014年10月に国内のエリーパワーがアメリカのEnphase Energy社と提携し、エリーパワーが蓄電池を提供することで合意した。ここでは、バッテリをベースとしながらも一般家庭用の100V交流電圧を中心とし、電力ネットワークを構成する分散型電力貯蔵システムをEnphase Energyが提供した。同社は、[図3]のようなマイクロインバータを世界各地に提供している。

[図3] ソーラーパネルと蓄電池の組み合わせにバッテリモジュールを追加できるシステム
出典:Enphase Energy, Inc.
ソーラーパネルと蓄電池の組み合わせにバッテリモジュールを追加できるシステム

ソーラーパネルにマイクロインバータを搭載しておくと、何枚でもパネルを拡張できる。同時に、バッテリシステムであるリチウムイオン電池モジュールにもマイクロインバータ(双方向)を搭載しておけば、バッテリの数を増やすことが容易になる。ソーラーパネルとバッテリシステムとは、100Vの商用電源ラインでつながっているだけではなく、電力を消費する側も100Vの商用電源をそのまま使える。

新リチウムイオン電池は発火しない

この発電と消費、蓄電が一つの村のようになれば、地産地消で電力を賄うことができるようになる。エリーパワーが独自開発したリン酸鉄リチウムを正極に採用した大型リチウムイオン電池は、電池に釘を刺しても、発煙・発火・破裂せず、世界で初めてテュフラインランドの安全認証「TUV-Sマーク」を取得しているという。

また、Enphase Energyは2018年6月に、オーストラリアとニュージーランドで第7世代のマイクロインバータIQ7をサンプル出荷し始めたと発表した(参考資料2)。IQ7の重さは1.08kgと軽く、体積は212mm×175mm×30mmと小さいながら、直流から交流への高い変換効率を持つ。その数値は96.5%。つまり、直流で100Wの電力を交流に変換するときに96.5Wの電力を保つことができるのだ。Enphase Energyの従来製品Sシリーズの半分の大きさながら、23%以上も多くの電力を扱うことができるようになったとしている。この最新マイクロインバータに搭載した55nm製造技術のASIC半導体は独自開発したものだ。

マイクロインバータの最大のメリットは拡張性があることだ。ソーラーパネルの出力をもっと上げたい場合には、このマイクロインバータを取り付けたソーラーパネルを追加すればよい。またバッテリの容量を増やしたい場合も、双方向マイクロインバータを取り付けたバッテリシステムを追加すればよい。その際の配線となるのは商用100Vラインであり、相互に接続することができる。

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