No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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ロケットデザインはエンジン性能で勝負する

ロケットの場合は、目的が"打ち上げること"に限定的なので、宇宙船以上に基本的な設計デザインに変化がみられない。第二次世界大戦中にドイツのフォン・ブラウンが開発したV2ロケットから、大きな進化はしていないといえるし、すでに最適化された形ともいえる。ロケットデザインが決まるプロセスは、まずどれだけの容量を運ぶかによって、エンジンが決まり、推進薬の量が決まる。するとタンクの大きさが決まるので、自ずと直径と長さが決まってくる。

そこで違いが出てくるのは、エンジンの性能。その中で、最適化を求め続ける、日本が誇るロケットエンジンを紹介したい。

現状では、日本のロケットの推進剤は性能のいい液酸液水(液体酸素/液体水素)。ところがロシアのロケットはそこまで高性能とはいえないケロシンである。しかし宇宙船を飛ばすにはケロシンで十分であり、ロシアはその性能を十分に引きだす能力を持っている。ケロシンとは灯油のこと。誰でも手に入る燃料で、きちんと目的を達成する。ロシアは3000回近い打ち上げを実施しており(日本は100回未満)、経験がより確実性を高めている。

H-2Bロケット3号機打ち上げの様子の写真
[写真] H-2Bロケット3号機打ち上げの様子 (c)JAXA

そのような中でも、日本が誇れるエンジンがLE-5エンジン。従来のガスジェネレータ方式から、さらなる能力向上・効率的燃焼を目指して技術を発展させたエキスパンダーブリードサイクルという方式を採用し、その開発に挑戦した。燃料室の冷却に使用した水素をポンプ駆動用のタービンガスとして使用。構造を簡素化し、タービン駆動ガス温度を引き下げることで信頼性が向上するとともに、製造経費節減を図っている。トラブルが起きても爆発しにくく、本質的に安全なエンジンといえる。LE-5Aエンジンの開発実現により、世界初の再々着火が可能になった。3世代目改良型であるLE-5B-2が現在H-2A*2およびH-2B*3ロケットの2段目に搭載されている。(2013年4月1日時点で第2段エンジンは100%成功)

宇宙船の設計デザインは完璧なる機能美の世界。

宇宙船の設計は、当初、作る人によりデザインが変わるものだった。構造担当、空力担当、エンジン担当、装備担当、それぞれのこだわりがあり、そのバランスによって機能美が生まれていた。その後、宇宙船、ロケットともに研究が進み、今ではそのフォルムも一定のものが確立されてきている。また、ロケットで打ち上げるという制約がある限り、宇宙船のデザインに大きな違いは生まれないだろう。しかし、今後、ISSのように宇宙空間での組み立てが推進されれば、制約や条件はまったく変わってくる。将来は、斬新なデザインの宇宙船がお目見えする可能性もあるだろう。

三菱重工業航空宇宙事業本部宇宙事業部事業部長の淺田正一郎さんはこう語る。 「今のロケットや宇宙船のデザインが、正解なのかどうかわかりません。歴史が違っていたら、他の形になっていたかもしれない。しかし、考え尽くされたものはいい形になり、美しさが生まれます。考えが足りないものは、やはりどこか気にかかるものです」

宇宙開発は、無駄なものが入る余地が一切ない。だからこそ完璧なる機能美となって、宇宙船やロケットの美しいデザインが完成する、そこが男心をくすぐる要因なのではないだろうか。

※本文中の組織名称は、インタビュー時点の名称です。
取材協力:株式会社スペースシフト http://spcsft.com/

[ 注釈 ]

*1
打ち上げロケットの先端部分で、搭載されている人工衛星や宇宙機などを保護するカバー。宇宙空間に出ると分離する
*2
H-IIA ロケット:宇宙開発事業団(NASDA)と後継法人の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工が開発した、人工衛星打ち上げに使用されている主力大型ロケット。
*3
H-IIBロケット:宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業が共同開発した、日本で最大の能力を持つ人工衛星打ち上げ用クラスターロケット。2009年9月に試験機1号機が打ち上げられた。

Writer

大草 朋宏

フリーランスエディター。雑誌社を経て、2002年からフリーランスとして活動。カルチャー、音楽、ローカル、エコなどを中心に取り扱う。

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